松本市内にある、「DIALOGUE(ダイアローグ)」「ENSEMBLE(アンサンブル)」というセレクトショップの他に、この秋新たにレディースのお店「flair(フレア)」をオープンしたIDEALさん。
全店舗、こだわりが光るかっこいいお店なんです。
ということで、弊社の営業担当いぬかい(前職アパレル。パリコレ参加ブランドにてインターンを経験)と共に、新店舗の「flair」さんの取材をしてまいりました。
WebサイトもかっこいいIDEALさん。IDEAL公式Webサイトはこちら http://idealinc.tv/
普段わたしはリサイクルショップで服を買うことが多いので、素敵なお洋服を扱うお店に緊張が隠せません。
果たしてどんなお店なんでしょうか…!行ってみましょう!
きょうのKnower
橋場英太朗 (はしば えいたろう)
この場所の楽しみかた
デザイナーさんたちのこだわりが光るお洋服、かばんや小物たちを楽しんでください。
日常の中にありながら、どこか別の場所に来たような、
ちょっと贅沢な気分が味わえる時間や空間を提供しています。
トレンドとしてのファッションを楽しみながらも、
自身のスタイルとアイデンティティをもった女性に共感していただけたら本望です。
お店の空間づくり
ーー素敵なお店ですね!オープンまではいかがでしたか。
橋場さん:ここの内装をやるのがずっと楽しかったですね。ゼロベースのところから、内装屋さんと一緒につくったお店で。
別な場所でやりたいっていう話もあったんですけど、駅からちょっと離れているロケーションが自分のなかではおもしろくて。
いぬかい:IDEALさんは店舗が増えるごとに、だんだん人通りのないところにこう…(笑)
橋場さん:だんだん人通りのないところに行っているかんじですね(笑)。
いぬかい:このあたりは専門店街ですよね。
flairさんがあるのは、人形屋さんや、種屋さん、値札屋さんなど、昔ながらの専門店が連なるエリア。綺麗な水も流れていてとっても素敵です。
内装には、アンティークの材なども取り入れているんだそう。お店の世界観を表現するべく、内装や雰囲気造りの細部までこだわったという橋場さん。
橋場さん:シンプルで上質なものが好きなんですけど、自分の好きな世界観をストレートに表現するうえで「いいもの」っていうことになると、古いも新しいもなくて。でも古いものにはつくりがいいものが多いし、こちらもそれなりのものをしつらえないとよりよく見えないというか。でも新しいものにもいいものはたくさんあるので、世界観に合うように選びました。やっぱりそれなりの服を置くにはそれなりの空間というか、呼応するものがあるんですよね。
名前の由来
橋場さん:Flair Magazineっていう、この雑誌の名前からとったんです。ジャン・コクトーとか、サルバドール・ダリなんかも参加しているんですよ。ファッションだけじゃなくて、アートだったり文学だったり、いろいろな要素が混ざったものなんです。これはその雑誌をまとめた本ですね。
これは…素敵すぎる…
ーーこの雑誌は、どうやって発見したんですか?
橋場さん:こういった雑誌で現存しているものでは「ヴィジョネア」っていうのがあるんですけど、世界で200部くらいしか出さないからとっても買えないんですよ。「いいな〜」と思って調べてるうちに、ヴィジョネアの原型になったのが1950年に1年だけ発行されたFlairマガジンだっていう記事をみつけて、「なにそれ!」って。
橋場さん:よくズボンのブーツカットみたいなところをフレアーっていうじゃないですか。あれとは綴りが違うんです。こっちは、アクセントが頭につくんですね。直訳すると「センスがいい」とか、「勘が鋭い」とかそういう意味で、単純に意味もいいなと思って。そういう女性のための洋服、センスのいい、アイデンティティを持った女性のお店っていうコンセプトとも合うなと思って。
建築からアパレルへ
橋場さん:ぼく、もともとは建築を勉強していたんです。安藤忠雄や隈研吾やヘルツォーク&ド・ムーロンとか、そういった人たちになりたいと思って建築の道に進んだんですけど、とんだ勘違いで(笑)。自分の将来がなんとなく見えてしまって…。このまま行くと、良くても住宅メーカーの営業とかなのかなと思って。それってやりたいことかなと思ったときに、次に好きだったのがファッションだったので「ファッションの道に行こう」と。
でもデザイナーには憧れなかったんですよ、なぜか。服つくるよりはお店っていう空間が好きだったんです。そこはなんか、建築と絡んでるのかもしれない。
お店をやるには販売とかの経験が必要だから、そういったアルバイトをしたりして。やっぱりやってみたら面白かったし、建築では全然ダメだなと思ったけど、こっちでは「なんかいけるかも!?」って根拠のない自信がだんだん芽生えてきて、「これでいこう!」っていう風だったと思いますね。
ーー自信が持てるって、やっぱりいいですね…。
橋場さん:やっぱり自分の仕事に酔えないと。ナルシストっていう意味じゃないですよ。でも、そうでもないと力出ないっすよね。「自分の店に来てみろ」っていう気持ちがあったんじゃないかな。「センス」っていうのは曖昧なものだけど、そういうもので勝負し続けてるのは変わらないと思います。
自分たちのお店には、確かな「自分たちらしさ」みたいなものが出ていると思うし。
橋場さん:もちろん好き嫌いもあるので、ぼくらのセンスに合わないという方がいて当然だし、そこは全然気にしていないんですが、伝わる人にはとことん伝わるように、うちも妥協はしない。徹底的に。「この世界観が好きだったら絶対これも好きでしょ!」って、なるべく提案できるようなマインドを持っていたいし…。
好きなアルバムを勧めるように、「これが好きならこれ!」というものは用意しておきたいのだという橋場さん。
いぬかい:イデアルさんで扱っている服はパターンがすごく綺麗ですよね。ドレープとか、めちゃくちゃ綺麗だなと…。
橋場さん:はい。パターンに関してはもう、こだわってますね。素材とかつくりが上質なものを提供したいっていう思いがあるので。
いぬかい:ご自分で服をつくろうと思ったことはないんですか?
橋場さん:ないですね。自分がつくったとしても「この人にはかなわないな」っていう人が絶対にいるんですよね。でもそういう人たちって、つくるのはプロだけど伝えるのがへただったりするんです。そういう人たちのつくったものを、人々の生活に落とし込んでいく仕事なので、ぼくらは。単純に「いい服」とかそういうことだけじゃなくて、つくってる人の温度やそういうのが、ぼくはすごい大事だと思っていますね。
苦労したこと
橋場さん:全部苦労で、ひとつも楽なことはないですよね。たぶん洋服屋をやってる人はみんなそう言うんじゃないですかね。中途半端な感じだったらやらないほうがいい。洋服屋さんってほんとに大変だから。つくるほうも大変だし、半年タームで変えてかなきゃいけないし…。でも、なんだろ。好きなんですよね。困ったことばっかりで、それでも好きで続けてる自分が一番困りものって感じですね。
でも、楽なことはひとつもないですけど、お客さんが喜んでくれたりとか、自分がやりたいブランドができたりとか、そうやって両想いになる感じがすごいうれしいのかな。レディースのお店をやるってことになったときに、最初お願いしたブランドさんにはほとんど断られました。お店がないから。そのあと「こういうお店をやるから、こういう風にやっていきたい」ってプレゼンテーションして、応えてくれたのがこの最初のラインナップで。
だからこそ思い入れがすごくあるし、一緒に頑張りましょうっていう感じです。ぼくらにとっての理想・究極の目的をわかってもらって、それに共感する人たちと取引をして、共鳴をしてくださるお客様とつながっていくというか。お客さんも、ぼくらを通してデザイナーと同じ意志を持てるというか…。それにもロマンがあるんだと思うし。だからもう、こっからだと思いますよ。
いぬかい:向こうも、生産する数は決まってますもんね。
橋場さん:そうそう。それに、半年前なんですよ、ぼくらの発注って。今日頼んで明日入ってくるわけじゃないんですよね。最短でも4ヶ月くらいですね。断られちゃうと商品が入ってこないから。
いぬかい:それはほんとに焦りますよね。
橋場さん:今まで用意周到にできたことって、あんまりないですね(笑)
気をつけていること
ーー気をつけていることやこだわりはありますか?
橋場さん:スタッフが「いい」と思ってやるならまだしも、去年問い合わせが多かったとか、WEBで売れてるとか、本当かどうかわからない噂や情報によって買い付けをするのはいやなんですね。
ぼくらって免許があるわけじゃないじゃないですか。資格もないし。お客さんに信頼してもらうなら、センスしかないですよね。
これからぼくらの業界はもっとシビアになると思うんです。今は流行を捉えるのがうまい人たちが上手にやってるところが結構あるけど、これからはセンスの時代だと思います。お客さんも、たくさん情報を持って商品をみてるから。
去年売れたからって今年も取っても、売れないんですよ。それに、データに左右されて取っただけで、スタッフがほんとに「いい」って思って取ったわけじゃないじゃないですか。それで失敗するのが嫌なんですよ。失敗してもいいから、自分の「これ!」っていうもので勝負したいというか。
いぬかい:はやりものを集めた服屋って、言ってしまえばもう「像」じゃないですか。そういうところは結局、路面店とかを開いてもネットショップに取られちゃいますよね。
橋場さん:ほんとにその通りで、お客さんももう、そういうところにはあんまり惹かれないんじゃないかと思うなぁ。
影響力のあるデザイナー
いぬかい:買い付けのときにはショーとかにも行かれるんですか?印象的なショーはありましたか?
橋場さん:そうですね。印象に残っているものはたくさんありますけど、もうやってなかったり、うちでは扱ってないブランドのものだったりもしますね。クリスヴァンアッシュっていう人がやってたショーとか、マルタン・マルジェラのものだとか…。
マルタン・マルジェラっていうデザイナーがぼく一番好きなんです。もう今はいないんですけどね。ああいう風に、服だけでなく価値観も提案できる人は偉大だなって思います。
マルタン・マルジェラさんのブランドの服で有名だというのが、エイズのチャリティTシャツだそう。IDEALさんの経営しているENSEMBLEという店舗でお取り扱いがあります。
「THERE IS MORE ACTION TO BE DONE TO FIGHT AIDS THAN TO WEAR THIS T-SHIRT BUT IT’S A GOOD START(エイズと闘うためにすべき活動はもっとあるがこのT-シャツを着ることは良い始まりだ)と書いてあるのですが、着ると部分的に文章が隠れるので「これ、なんて書いてあるの」とコミュニケーションを生むようなデザインになっているのだそう。
橋場さん:コンセプトとかフィロソフィーが素晴らしいんですよ…。そういうのが自分の価値観のベースになってるのかな、と思いますね。
いぬかい:自分が前にいたANREALAGEの森永さんも、マルジェラはすごい好きだったんですよ。
※いぬかいの前職はアパレル。
橋場さん:マルジェラっていう存在はちょっと別なところにいるっていうか…。アーティストがみてもアーティストだと思うような人だったんじゃないですか。いい悪いは別として、価値観を変えてしまうようなクリエイションができる人ってのはやっぱりすごいなって。「いい曲はいっぱいあるけど、シーンを変えるような曲がない」っていうのを聞くじゃないですか。洋服の業界でも今そんな風に言われてて。ぼくメンズを11年やっているんですけど、「これ以上広げていきにくい」と思っていたときに、すごくソウルフルですばらしいクリエイションをする女性がすごく増えていて。ぼくがこういうのもなんだかアレなんですけど、ファッション業界では今、女性デザイナーのほうが元気なんです。
いぬかい:確かに、目立ってますよね。
橋場さん:そういう人たちが力をつけてきて、レディースの世界ですごく盛り上がってきて。女性の憧れっていうか、カリスマみたいな人が出てきてて。そういう人がこれからのファッションを面白くしていくんじゃないかって思ったときに、もうレディースをやらずにはいられなくなっちゃったんですよ。いてもたってもいられなくなっちゃって。「うち、メンズだけやってたらダメだ」と思って。こんなにシーンがめまぐるしく盛り上がってきてるのに、気づいていて何もしないなんてありえない。
このflairっていうお店で扱っているブランドは春からもう一つ増えるんですけど、エネルギーを持った、パワーを持った女性のブランドっていう感じですね。そういう人たちの服が集まった時に、それがきちんと成り立つ空間やコンセプトをつくるところなんかが、このお店のルーツになっていると思いますね。
ーーどんなお客さんが多いですか?
橋場さん:常連さんがほとんどですね。結構噛みしめないと、うちは味がしないかもしれない…(笑)
いぬかい:服屋さんっていうもの自体が、「入りにくい」ものじゃないですか。
橋場さん:うちとか、全店舗入りづらくないですか?!(笑)
橋場さん:でも、お店に入るときの高揚感や「非日常」感みたいなものも煽りたいという気持ちもありますね。どこか日本じゃないような、松本じゃないような気分になるような空間が日常にあるってちょっと素敵じゃないですか(笑)。うちで買い物をしてくれたあと、美味しいものを食べにでも行ってくれたら最高だなぁ、みたいな。そういうのも心の栄養じゃないですかね。
ーーなるほど…!自分の気持ちがちょっと上がったまま次に行けるっていうのは確かにすごく贅沢ですね…!
お店に来て欲しい人
橋場さん:女性の服を扱うお店なので、デザイナーさんもかっこいい女性たちです。ですので、ぜひ自立した女性に来てほしいと思いますね。
他の店舗では男性向けのものを扱っていますが、この人にしか出せない世界観や、マネのできない仕事をしている人たちばかりです。「この人がつくるのなら間違いないな」という作家性というか、そういうものはとっても大事だと思います。じゃなかったら高い値段出す意味がない。それこそユニクロとかで十分いいと思う。そうじゃなくて、「この人じゃなくちゃだめ、このシルエットのクセがいいな」とか、「この人いつもこの素材だな」とか、「この人光に当たると色が変わるな」とか(笑)。
ーー笑
橋場さん:なんかそういうのって大事ですよね(笑)。そういうのが、心を動かす気がするな。
それは家具もそうだし、陶器とかもそうだし…。そういうことの積み重ねじゃないっすか。なんか、人間がつくるものだから、いい時もあれば悪い時もあるんですよ。でもだからこそ面白いんであって、そういったところにも人々を感動させる力があるんじゃないかなって。そういうつもりでやってますね。
「なにかやりたい」というような未完成のエネルギーも嫌いじゃないんですけど、ぼくはもう少しそれを経て、徐々に自分の境地にたどり着いていく人の感性みたいなものが好きですね。
お店のこだわり
橋場さん:洋服を選ぶことも住む部屋のインテリアや食べるものを選ぶことと同じで、意志やアイデンティティを持って選ぶ人に来て欲しいっていう思いがあるから、10人に1人、20人に1人っていうところを狙っているし、そういう人たちが最大限満足する商品構成や、ブランドのセレクトをしています。うちの会社の求められている部分っていうのは、「わざわざそんなことやらなくてもいいのに」と人が言うようなところにあるというか。他の人がやらないことをやっているのが使命かなと思います。
簡単にできちゃうことって別に自分がやらなくてもいいというか、もっと頭のいい人がやってくれるというか。そういう人たちや大手の方々とまともに戦っても勝てない分、ニッチで誰もやらないような、めんどくさくて大変なようなことに勝機があるという気がしますね。
なるほど…!
橋場さん:ただ単に服を売っているというよりかは、意志とか価値観を一緒に提案しているつもりなので。そういうところに共感していただける方が松本に、もしくは長野県にいらっしゃれば、このお店は続いていくだろうし、自分たちもそういう意志を腐らせないように、心意気をなくさないようにやっていくことが一番なのかなっていう感じがあります。もうなんか、意地かな〜。執念!(笑)自分も、そういうものに惹かれますよね。
いぬかい:変に接客に偏るよりもこだわりを通したほうが、ということですかね。
ーー自信があるからこそできる…
橋場さん:それがプロフェッショナルかもしれないですね。ニーズを受けてやるというより、自分たちから発信していくってことですよね。
服の展示会とか行った時はそういう感じですもん。いいデザイナーに出会った時とか、「よっしゃあ!」って。この人を表に出してあげよう、みたいな。
そこにニーズがあるのかわからないんですよ、ぼくらのやってることは。マーケットがあるかなんて全然わからないんですけど、これが「やらなきゃいけないこと」というか…。
いぬかい:結構、デザイナーさんの中には喋らない方もいるじゃないですか。
橋場さん:そういう方の方が多いかもしれないですね。でもぼくは結構「作家性」にこだわっているので。
そういうのにこだわっていくと、お店で扱うブランド数をあんまり多くできないというか…。セレクトショップとかでも、それこそ20〜30ブランドのものをちょこちょこちょこっと買い付けてお店をつくるとお店のオリジナリティみたいなものをわりと簡単に出せるじゃないですか、そういうやり方もひとつあるんですよ。でも、ぼくはあまりそれには興味がないんですよ。つくり手に失礼だと思っちゃうから。半年かけてつくったものを、ぱぱっと行ってガッと買い揃えるのは失礼だなぁって思っちゃって。なので、しっかりリサーチをしますよ。
みんなでつくるお店
橋場さん:自分たちは一か八かのギャンブルみたいなことをいつもやっているけど、でもうちのスタッフはみんな自分のセンスを吐き出してるから、それがお店に現れてて。仕入れとかもかなり任せるんですよね。お店のスタッフたちに展示会にも行ってもらって、「ほんとに自分のいいと思ったものをつけてほしい」って。それをお客さんに勧めるのが一番力が出るじゃないですか。なんか勝手に誰かが仕入れてきたものを売るよりは、自分がいいと思ったものを仕入れて売る方が、お客さんに伝えるのが一番伝わるでしょ。伝えるところまでが仕事だから、そういう熱量を多い仕事がしたいし、スタッフも一人一人が主役だし、そういう仕事をしてくれっていう風に言っています。
ひとりでお店をやったほうが、自分のフィロソフィーを貫けたり、理にかなってるところはあると思います。でも人が増えるといろんなアイディアがリンクするっていうか。で、会社ってincがつくじゃないですか。IDEALにincをつけると、一文字違いですけど「アイディアリンク(IDEA LINC)」と読めます。まぁ、「c」じゃなくてほんとは「k」なんですけど(笑)。そこもちょっと考えました。
橋場さん:これ以上規模を大きくするつもりはないですが、またきっと衝動的になにかやりたいことが生まれると思うんです。それには正直でありたい。そしたらスタッフにもいうんです。
レディースのお店をやりたいってなった時も、みんなに「どう思う?」って言ったら、「いいんじゃないっすか!」って応援してくれて。「じゃあ、やろうか!」って。みんな遠慮してるところもあるとは思うんですが、言いたいことはお互いに言えるようにっていうのは心がけてて…。ぼくは全くカリスマ経営者じゃなくて、それは一番自覚してて。「俺についてこい!」っていうタイプじゃないんで、それよりは全体調和っていうか、ととのえている感じかなと思っています。それを強みとして、会社をやっていく上では活かしています。
松本の気になるところ
橋場さん:若い人たち。全然面識がなくっていけないんですけど、年齢というよりは、なにかをやりだした「年月が若い」人たちっていうか、そういう人たちの頑張りがすごく気になっていて。それこそ20代、30代の人たちが今なんか、自分たちにしかできないことをやろうとしてて。ああいう人たちがまた文化をつくっているというか。松本はもともとバーの街だったりとか、ぼくらのひとまわり上の人たちが作ってきたカルチャーが成熟してきてて、それに今度若い人たちのカルチャーが重なってますよね。
ぼくら服屋だけど、服だけじゃ街はまわらないというか。服もいいけど、飲食や文化的なこと、飲み屋もそうだし、そういう総合的なもので街が魅力的になっていくからすごく大事だと思っていて。ようやくそういう人たちがちょっとずつ出てきている感じがして、それが自分のなかでは気になることっていうか、楽しみなことですね。
橋場さんのかばんの中身
橋場さん:これはCHACOLIっていうブランドの、オススメのかばんなんです。このお店でもお取り扱いがあります。
いつもPCを入れているんですが、これはPCをそのまま入れても大丈夫なようにレザーが敷いてあるんです。
その他には筆記用具、手帳、お財布(マルタン・マルジェラだそう)、資料、電卓など。シンプルに必要な物をまとめたかばんはかなりの重量に!
これを毎回持ち歩いているんだそうです。
橋場さんの1週間
ストイック…
橋場さん:ほんと、こんなことしかしてないな…。休むのが下手…。
いぬかい:スタッフのみなさんと飲みに行ったりはしないんですか?
橋場さん:ランチをしたりはしますね〜。こういう生活なんで、休みは週に1日あるかないかくらい。生活は結構子ども中心ですね。日曜は、子どもを公園に連れて行ったりしています。
はまっていること
橋場さん:なんだろう…。仕事が一番好きかな。だからほかのことをやっても面白くないんですよ…。ゲームとか漫画とかも、はまんないんですよね。
なんか、ぼくこの仕事が一番アドレナリンが出るんですよ(笑)。あ、でも子どもはすごい楽しいです。
いぬかい:お子さんは、なにか習い事とかってされてるんですか?
橋場さん:最近はスイミング始めて。今上の子が6歳なんですけど、自転車に乗れるようになったんで。ようやく補助輪が取れて。小学校に入るまでに乗れるようにしたかったんですよ。お父さんとしてはやっぱり、補助輪を取るっていうのは大仕事なんで(笑)。それを成し遂げたということはひとつ自信になった。「よっしゃあ!」みたいな(笑)。サイクリングとかできたらいいなぁっていう感じかな、希望としては。子どもが遊び友だちになってくるのかな。だから、将来いろいろできるようになったら、一緒に何かできたらいいよねって思います。最近は、子どもがモチベーションです(笑)。
上の子と下の子がじゃれあったり遊んでるのをみると、「わ〜兄弟だ〜」って思ってじーんとします(笑)
いいなぁ〜
いぬかい:小学生で自転車乗れる・乗れないだと行動範囲全然違いますよね。
ーーわたしはキックボードで移動してましたね…。
補助輪付きの自転車に乗ったまま田んぼに落ちたのが原因で、6年生まで自転車に乗れなかったことを思い出しました
橋場さん:そうそう、うちで一番長く働いてくれてる子に最近子ども生まれたんですよ。で、このレディースのお店は1時間早く閉まるんです。女性のお客さんってあんまり遅くにこないんですよね。メンズは11時から7時なんですけど、レディースは11時から6時。
働くことも大事だけど、子どもの顔を見れるのも大事だから。
いいなあ
いぬかい:うちも7月からフレックスタイムになって。お子さんのいる方とかは、7時に来て4時5時に帰ったりとかしていますよ。お子さんのいる人にとっては、そういうの大事ですよね。
橋場さん:そうっすね、大事大事!営業時間もそうですけど、働き方!今までは「自分がなんとかやらなきゃいけない」っていう感じでしたけど、組織になると「いかにみんなが快適に働けるか」っていうことを考えないと。6時に帰れれば、そのあとごはん作ったりゆっくりできますからね。
ーー確かに、わたしも8時9時に帰ってごはんつくるの嫌です。
いぬかい:もっと朝早く来ればいいじゃん(笑)
ーー …
橋場さん:まぁまぁ(笑)。自分にも子どもがいるから、子どもが支えで家族が大事だったり。帰ったら子どもたちに会って話したり、おやすみって言えたりするのが楽しみだったりするんで、スタッフの子たちにもそうやって思ってもらえるようにしたいなって。まぁ、今はまだ独身のスタッフが多いんですけどね。今後はそういう風に考えてます。
野望
橋場さん:「IDEAL」って、直訳すると「理想とか究極の目的」っていうことなんですけど、やっぱり自分たちが生きてる時間・限られた人生の中で何がしたいのかを求めて、それを目指していくのが人生じゃないかな、と。そういう意志を持って働く集団でありたい。だから、「下手でもオリジナル」みたいな気持ちでやりたいなって。それが結果、完成度が低くてもね、「その人が一生懸命考えてやった事なんだな」「その人が自分のビジョンに向かったんだな」っていうのが残るような。それってぼくらが生きてる時代じゃわかんないかもしれないですよね。ぼくらが引退して、松本の将来、ファッションの文化がどうなっているのかわからないけど、確実に、そこになんか残せたらいいなっていうのはありますよね。
何かを成し遂げたいっていうよりかは、「何かをやりながら次はこうしたい」っていうのを繰り返してきてるんですよ、今日まで。最終的に何っていうのがなくて。
いぬかい:振り返った時に「これだったんだな」っていうことですよね。
橋場さん:レディースのお店も、別にやりたくて狙っていたというわけではないんです。「いつかレディースのお店をやったる!」とかはなかったわけです(笑)。そうじゃなくて、メンズのお店をやっているときにすごいかっこいいレディースのデザイナーを知っちゃって、「これを扱わなかったらうちじゃない!」と思った時に、レディースのブランドをメンズのお店に入れても絶対響かないなと思って。だったらレディースのお店をどーんとやろうと。日々の感覚に正直にっていうか、勘みたいなものになるべくうそをつかないっていうようにやってるっていうか。
本当は、もっと野望を持って商業的にやらないといけないなという風には思いますね。でも商売のうまい人はいっぱいいるから、やっぱり自分たちはやりたいことをやっていきたいというか。そこが「イデアル」なのかもなという風にも思っています。
取材を終えて
目に見えないけれども確かに存在している「センス」。
感覚という意味もありますが、人を魅力的にみせたり、何かを引き寄せるパワーになったり…。
上質なセンスを身につけることで、単なる日常を贅沢なものに変える事もできます。
身の回りにある様々なものって、実はセンスでできているんだなぁということを改めて考えてしまいました。
だとすると、「どんなセンスを選びとるか」ということはとっても重要な選択ですね。
普段はつくり手のことなんてほとんど考えずに服を買ったりしていたけれど、わたしもそんなこだわりの詰まったお洋服を着てみたいと思いました。
いつもよりちょっとすてきな装いで過ごすことも、自分を変える第一歩かも…。
気になった方は、ぜひIDEALさんのお店に足を運んでみてくださいね。
お店の情報
TEL: 0263-31-3848
住所:長野県松本市中央3-2-2
定休日:毎週水曜
営業時間10:00〜18:00
TEL: 0263-32-3231
住所:長野県松本市中央1-20-30
営業時間:11:00〜19:00
TEL: 0263-31-3145
住所:長野県松本市中央2-4-18
営業時間:11:00〜19:00
(取材・写真:えづれ / いぬかい)