最近靴を買った。
最近といえども7月頃だと思う。
夏はあついので、サンダルを履いていた。
こちらも今年買ったサンダルで、はやりの「スポサン」というやつだ。
非常に厚底だが、思いのほか歩きやすくて気に入っている。自分の持っている履き物のなかでは1番かそれくらいに、履いていて心地が良い。
真っ白なのですぐに汚れるが、ほんとうは夏でなくても履いていたいところだ。
秋になった頃、ようやく届いた靴を履く決心がついた。
今町通り商店街のお店で売られているその靴は職人さんの手作りで、注文してから届くまでに数ヶ月かかる。
そんなに大層なものはこれまでに持ったことがない。
ねだんはおおよそ3万円。
服や装飾品にお金を使うことは好きだが、普段はリサイクルショップのようなところで調達した数百円のアイテムばかり身につけているから、とにかく緊張する買い物だった。
3万円もしたので、履かないかもしれない。
革靴はそもそも、慣れるまでの靴擦れがしんどい。
しかしいざ履いてみると思いのほか馴染んでおり、街を歩くとすこし堂々とした気持ちでいられるような気がした。
靴がしっかりとしているというだけで軸がささったような感じがして、グンと落ち着いた気持ちでいられる。
もちろん履き始めの靴擦れを避けては通れないが、「おしゃれは足元から」ということばに対する長年の劣等感から解放され、どこか安心して過ごせる自分に気がついた。
ほんとうに欲しいと思ったものに対して素直に手を伸ばしてみるという選択が、なんとなく怖くなくなったような気がしないでもない。
身につけるものによってしかアイデンティティを保てないのは困りものだが、「良いもの」は劣等感をすこしだけ埋めてくれる気がする。
安心してますますリサイクルショップで奇妙なアイテムを発掘することができるようになるかもしれないし、そもそもリサイクルショップでむやみに服を買わなくなるかもしれないけれど、今年のひとつ印象的だったできごとはそれである。