Category : BORDER
1963年生まれ 1990年よりフォトジャーナリストとしての活動を開始。
パレスチナ、ソマリア、レバノン、ボスニア&ヘルツェゴビナ、コンゴ、スリランカ、シエラレオネ、コソボ、チェチェン、南スーダン、イラクなどの戦争を取材撮影し、主要雑誌、新聞、テレビなどで発表。また、スイス、ハワイ、ブラジルなど、戦争以外のルポルタージュなども取材してきた。2011年以降、東北被災地に何度も行き、津波や原発事故に関する撮影も行う。著書に、「戦争という日常」「バグダッドブルー」「パレスチナ 残照の聖地」「世界のともだち イスラエル」「世界のともだち パレスチナ」などがある。写真展、トークイベントを各地で開催している。
恋する虜: 2017年10月より、松本市で自らの経験や世界で起きていることを知る、伝える、考える場として「恋する虜」をオープン。カフェや古書店、イベントスペースを併設し、さまざまな社会問題を考える映画上映会や、イベント等を開催している。今後は、より多角的にイベントを開催し、またスペースをさまざまに活用したい人たちへと貸し出していきたい。
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2018年2月2日夜、写真家の村田信一さんをゲストに迎え、「聖地と生活~パレスチナとイスラエルの日常~」と題して第一回となるKNOWERS borderを行いました。
「パレスチナとイスラエルというと、政治的な話とか戦争の話になるんじゃないかと思う人もいると思いますが、今日はそうではなくて、パレスチナとイスラエルの子供や家族の状況とか、普通の生活を垣間見ることのできるような写真をお見せします。」
戦場写真家として紛争地域での取材活動を経験した村田さんが、「世界のともだち」という本の取材を通して、子供たちと過ごした日々を語ってくださいました。
「シラは、イスラエルのテルアビルという町に、お父さんとお母さんと犬と一緒に暮らしていて住んでいます。一人っ子で、、お父さんは保険会社の財務担当、お母さんは大きな病院の看護師をしているそうです。」
「これがシラの住んでいるテルアビルの町を遠景にみた写真です。テルアビルは人口が40万人ほどの地中海岸の町で、イスラエルでは一番大きな都市です。商業の街で、きれいなビーチが続いていて世界中から観光客が訪れる場所です。地中海に面しているので、気質的にもギリシャとかスペインとか、そういう場所の暮らしと非常によく似ていると思います。それから、ユダヤ人には結構アーティストが多く、テルアビルはアートの町と呼ばれていることもあって、美術館があったり、いつも常にどこかで絵画展や写真展を開催していたります。」
「シラは面白い子で、怪獣とかが大好きなんです。すごく独特な絵を描く、アーティスティックな子でした。」
「この写真は、学校帰りに体操服でそのまま買い物に行った時です。シラはとってもおちゃめで、カメラを向けるといつも何かしてくれる、普通に立っていることのない、そういう女の子です。」
「これは、シラの学校の授業風景です。イスラエルの教室は日本と違って、かなり雑然としてます。テーブルなんかもきっちり並んでいないですし、服装もバラバラです。実際に行ってみて、すごく自由な雰囲気があるなぁ、と思いました。」
「イスラエルは意外にも、農業大国なんですね。日本でも時々JAFFAというブランドを見ることがあると思うんですが、JAFFAはイスラエル国営の企業です。ビーガンと呼ばれる菜食主義者の人も多く、どこのレストランに行っても菜食メニューがあります。この写真は、テルアビルの町から少し離れた高台に、シラの家族と、その友達の家族とピクニックに行った時の写真です。ここから、まちが一望できるんですよ」
「パレスチナの紹介をする前に、少し現在の状況がわかる写真を紹介します。イスラエルは、イスラエル内にパレスチナ人が住んでいるパレスチナ自治区に壁を作っているんですね。高さが8m位あって、それを数百キロに渡って壁を張り巡らせている、そういう状況があります。この壁の向こう側は、イスラエルです。」
「パレスチナ人の大多数はイスラム教徒なんですが、これはパレスチナ自治区内にあるモスクのひとつです。お祈りをする、そういう場所です。」
「これはガザ地区のホテル群の写真です。ガザも地中海に面していて、テルアビルから海沿いに南下して車で1時間くらいの距離なんですが、今ガザっていうのはその手前に大きな検問所があって、普通の人は入ることができません。国境を管理しているのはイスラエル軍です。パレスチナ人の人たちもそこで許可がないと入れないんですが、検問所を通るだけでも数時間、ひどい時は何日も待たされる状況になっています。」
「これはガザのビーチです。ガザと言うと紛争絡みの映像しか見る機会がないと思うんですが、基本的にはすごくいいところです。」
「これはエルサレムの旧市街を描いてある地図です。旧市街というのはほとんどパレスチナ人のイスラム教徒とクリスチャンが住んでいるんですが、その一画にユダヤ人地域もあります。」
「もう一人の主人公、パレスチナで暮らしているルールデスです。キリスト教徒の家族で、お父さんとお母さんと弟と暮らしています。ルールデスの一家はお父さんが旅行会社を経営していて、お母さんは法律事務所で働いていて、比較的裕福というか、経済的には中の上クラスの家庭です。」
「これが、ルールデスの家の屋上から見た、エルサレム旧市街の風景です。」
「これはルールデスと一緒に旧市街へ買い物に行った時の写真なんですが、旧市街はこういう風に細い道が入り組んでいて、様々な物を買う事が出来ます」
「これはですね、旧市街の中にあるパレスチナ人の玄関なんですが。イスラム教ではメッカ巡礼ということをやるんですが、メッカ巡礼をした人たちが、こういう絵を描いて、いわゆるお祝いでもあるし、この家の人たちはメッカに行ってきたんだよと周りの人に知らせる目印でもあります。メッカに行ってきた人達はいわゆる称号として、男性ならハッジ、女性の場合はハッジャと呼ばれ、すごく名誉なこととされています。」
「イエス・キリストが磔にされたゴルゴダの丘だった場所に聖墳墓教会があります。旧市街の中では、イエス・キリストがゴルゴダの丘に行くまでに通った通路というのが、巡礼の通路となってまして、何か所かステーションと呼ばれている所があって、そこで巡礼者が立ち止まってお祈りする場所になっていて、これはそういう場所のひとつです。」
「これはルールデスの学校の風景です。彼女はフランス系のミッションスクールに通っていて、ここにいる子供たちはパレスチナのキリスト教徒の子たちです。奥に映っている女性は校長先生ですね。」
「これは、仮装のお祭りがあって、簡単なコンテストみたいな事をやっていたんです。ルールデスはなぜか、FBIの恰好をしていますね。パレスチナではイスラム教徒が多いのですが、イスラム教徒を選ぶとある種ステレオタイプの感じがしたので、今回は先ほどの学校の校長先生に紹介してもらって、ルールデスに出逢いました。」
第一部として村田さんにシラとルールデスを紹介して頂き、参加者の皆さんから様々な質問が飛び交いました。政治紛争が際立って報道されることの多いイスラエルやパレスチナに住む二人の女の子を少し知るだけでも、その場所に対するイメージがずいぶん変わると思います。第二部では、そういった報道にある紛争の現実も含めて、参加者のみなさんと印象深いお話しをすることができました。中東情勢は様々な因子があり、なかなか日本から「正しい理解」へたどり着くことは難しいと思います。だからこそ、そこに住む「人」を知り、想像することが大切なのだと感じました。
「シラとルールデスが会ったら、友達になれるんでしょうか?」という質問に対して、村田さんが「友達になれると思います」と明快に答えてくださったのが印象的で、なんだかうれしかったです。
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KNOWERS border は、「世界市民」としてのスタイルを学び合うプロジェクトです。現代に生きる私たちの生活は、世界中の「LOCAL=地域」から生まれた文化や習慣、プロダクトに支えられています。物流、情報、観光が加速度的に変化する今、様々な地域に暮らす人々を知り、多様性あふれる「世界」の作法を一緒に考えてみませんか。
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アートプロジェクトの企画運営、編集/デザインを主な仕事にしています。London Metropolitan 大学BA/Spatial Arts 1st取得、東京芸術大学大学院修了。美術家の助手としてヨーロッパ各地のアートプロジェクトに参加、2012年より祖母が暮らす長野県安曇野地域に移住。鳥獣被害対策員として2年間猿を追いかけながらZINE「Sourcepanic」を発行。「北アルプス国際芸術祭」や「信濃大町あさひAIR」の企画、運営、制作に携わる。現在はKNOWERSコーディネーターの傍ら、安曇野にある祖父母の家をサイトにアートプロジェクトを構想中。
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