【取材】まさかの視点で古きを新しく!?奥信濃を拠点に生きる、「鶴と亀」の小林くんに会って来たよ!(前編)

Category : meet the knower 記事

 

全国でも有数の豪雪地帯である、長野県飯山市出身の小林くん。

「あまり仲良くない友達の家ですら1キロ以上離れている」というような環境だったため、小さい頃はおじいさんやおばあさんが遊び相手だったのだとか。

そんな小林くんが、お兄さんと一緒に制作しているフリーペーパー『鶴と亀は、地元奥信濃に暮らすありのままのおじいさんおばあさんの姿を写した、ヒップホップスタイルのフリーペーパーです。

その思いもよらぬ視点やセンスの良さから、全国各地で有名に。

雑誌などのメディアにとりあげられるほか、小林くんを特集した1時間番組(※日本民間放送連盟賞エンターテインメント番組部門で最優秀賞を受賞)が組まれるなど、今や信州信濃の気になる男…!

コワーキングスペースKnower(s)でも初期の頃から『鶴と亀』の設置をしていたので、この界隈では認知度も高く、たくさんの人たちが応援しています。

小林くん兄弟の主だった活動であるフリーペーパー『鶴と亀』及び活動にまつわる様々な思いについては、ジモコロというメディアサイトのこちらのインタビューに詳しく掲載されています。

その他にも、『鶴と亀』のキーワードや小林くんの名前で検索をかけるとたくさんのインタビューが出てきます。

信州大学で行われたTEDxでも登壇されており、かなりの親近感!

 

 


こちらは『鶴と亀』設置の際の恒例の記念撮影。『鶴と亀』オリジナルのサングラスとbling bling(※派手な光り物)を身に付けている、Knower(s)スタッフの様子です。


 

以前地元カンパニーさんの取材同行カメラマンとしてKnower(s)を運営するクラウドットに来社。その後も地元カンパニーさんの同世代ライター「ナガノのナカノ」さんがきっかけで、交流を深めることができました。

 

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こちらは古墳で遊んだ時の様子です。右がナカノさん。スケボーに乗っているところ。


 

今回小林くんは、さきほどご紹介した「ジモコロ」の編集長である柿次郎さんたちご一行の旅にカメラマンとして同行しているかたわら、9月に開催予定のイベントの顔合わせ会などに出席するということで、松本市に遊びに来てくれました。そのタイミングでインタビューを敢行。

その後、飯山市を案内してもらえることになったので、そちらは後編にてご紹介します。

TEDxの動画のあの滑舌で、ぜひ脳内で音声を再生してほしいよ〜!

ということで、早速行ってみましょう!

 

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きょうのKnower

小林 直博(こばやし なおひろ)

1991年生まれ 飯山市出身

フリーペーパー『鶴と亀』編集者兼フォトグラファー。ばあちゃん子。

 

 

小林くんの楽しみ方

写真を撮ります

兄と一緒にフリーペーパー『鶴と亀』を作っています

奥信濃のいいところを案内できます

ばあちゃん子です

ヒップホップが好きです

全国各地に出没します

生まれ育った長野県飯山市を拠点に、奥信濃らしい生き方を目指し活動中

 

小林くんの出没場所

飯山周辺(奥信濃)

東京都内

全国の面白そうな場所

 

 

気になる若者

 

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ーーやっぱりいま信州出身の若者で一番有名なのって…

小林くん:!? や、やめてやめて(笑)!

ハシヅメさん(友人):小林くんかGLIM SPANKYかどっちかでしょ(笑)。

 


二択?


 

小林くん:グリ…?なになに???

ハシヅメさん: GLIM SPANKYって、知らない??こないだ劇場版ONE PIECEの主題歌とか歌ってたよ。2人組のバンドで、ポルノグラフィティ的な(?)。

 


GLIM SPANKYは南信地区の飯田発2ピースバンドです。


 

小林くん:も〜!全然かなわない、っていうかやめてやめて〜同じ土俵にもう…

ハシヅメさん:飯田出身で、わたしたちと同い年だよ。

小林くん:へえ~!そうなんだ~〜!?すごいなぁ〜!

 

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こちらは友人と歩く小林くん。ズボンの紐をひっぱっている写真しかありませんでした。

ふと思いましたが、信州には「飯田」「飯綱」「飯山」など飯系の地名が多いですね。


 

小林くんのこれまでと最近

ーー現在はどんな生活をされているんですか?

小林くん:おっ!?こっからもうインタビューなの??

ーーさっきからです。

ハシヅメさん:ゆるやかな取材(笑)。情熱大陸スタイル…(笑)

 

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せわしなくてすいません…。


 

小林くん:今やってることって言うと、『鶴と亀』をつくるっていうことと、あと仕事っていうと、カメラマンをやったりちょこっとデザインやったりって感じかなぁ。たまにイベント企画したり。『鶴と亀』とかについてのざっくりしたことはね、もうジモコロを見てもらえば…。

じつは『鶴と亀』なんだけど、今もう手元に数部しか在庫がないんだよね…。みんな「何でお店に持って来てくれないのかな~」みたいな感じで言ってくれるのが、ほんとにうれしいよ~!


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人気のフリーペーパーなので、設置をしてもすぐになくなってしまうんだそうです。

ちなみに第壱号から第参号までをまとめた『鶴と亀 特別号』(税込2484円)の通信販売も行っているそう。

かもめブックスさんでお取り扱いがあるそうなので、気になる方はこちらのリンクから。


 

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そういえば、『鶴と亀』設置の記念撮影で使われることの多いこのbling bling。

実は小林くんが幼馴染と一緒に手作りしたものなんだとか!

こちらはラインストーンをつぶつぶと貼ってもらっているようす。


 

ーー以前、消防団の活動をやっているって言ってましたよね。今はどんな感じなんですか?

小林くん:地元の祭典部とか消防団に入団して今2〜3年目?とかなんだけど、いろんな大会とか催しとかを経験したからこそわかることとかがあって、それを踏まえた祭典部や消防団についての発信の仕方があるのかなと思ってて…。今、弾を込めてる。

 


小林くんは地元の消防団に入って地域の防災活動に貢献しているそう。その他に、実家の農作業を手伝う日もあるとか。


 

ーー消防団っていうのは、ボランティア活動なんでしょうか?

小林くん:一応報酬はでるんだよね。年度末。準公務員だから、消防団は。若い人は少ないけど、いないってわけじゃないかな。

ーーなるほど!ちなみに小林くんはデザインの仕事もしてるんですか?

小林くん:そこまでたくさんはないけど、一応してるよ。ポスター作らせてもらったり、飲食店や農家さんのポップとかチラシとか作らせてもらったり。

ーーカメラを始めたのはいつ頃ですか?

小林くん:大学入って1年目かなぁ。だから、18?19?とか。ただ普通に楽しそうだなぁと思って、そんな程度だったんだよ。

ーー加工も自分でやってるんですよね。

小林くん:そうそう。最近はあんまりバキバキな加工はしないようにしてるけど、アナログな感じがすごく好きで。できるだけそっちに寄せようとしてるけど、やっぱフィルムのアナログな質感には勝てないね〜。

 

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こちらは友人ハシヅメさんをモデルに撮影した『鶴と亀』オリジナルグッズであるリメイク版JA CAPの写真。

色合いやコントラストなど、アナログを意識した感じが出ていますね。

ちなみに、手に持っているのはわらび。


 

ーー将来の夢はあったんですか?

小林くん:ん〜、どっかで公務員になるかなぁ…みたいな感じだったかな。

ーー予想外の無難さ…。

小林くん:まあ今の時代、公務員だって無難な仕事ってわけじゃないだろうけどね…。


 

とりあえずやってみよう


こちらは鶴と亀のPR動画。他のフリーペーパーと差をつけるために制作したものだそうです。


 

ーーカメラやデザインソフトの使い方をしっていたとしても、自分の表現に落とし込むことのできる人は多くないと思うんです。何かをやってみたいという人がいたら、どのようにアドバイスしますか?

小林くん:うーん。自分もこう、ぱっと思いついてやったってわけじゃないし、ずーっと「フリーペーパーつくってみたいなぁ」「表現したいなぁ」みたいのが重なって、「なんかないかなぁ」って考えたときに、だんだんと形成されてったもんというか…。

ーーひらめいてから形にするまで時間はかかりましたか?

小林くん:それはそんなにかかってないかなぁ。最初は「とりあえず作っちゃう」ってのが結構いいかな~って思う。大学四年のお正月ぐらいにやりたいなーと思って、三月ぐらいから動き出して、夏にはできてたみたいな感じなんだけど、まぁとりあえず作っちゃって形にして世に出して、いろんな人にいろいろ言ってもらえるから直したいところは直しちゃえばいいし。まず形にして…っていうのは強いかなぁとは思うけどね。でも焦る必要もないと思う、うん。

 

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飯山での遊び方

ーー飯山では何をして遊んだりしますか?

小林くん:メシ行ったり、景色がいいとことかゆっくりできるとこ行ったりバーベキューしたりとか、あとなんだろうね?ドライブ、温泉…。

ーー子供の頃は何をして遊んでいましたか?

小林くん外で遊ぶ

小学校からうちまで5キロあったからバス通だったんだよね。友達と登下校とかもずっとしたかったんだけどさ〜、してないんだよね。バスの子もあんまりいなくて。みんなまだ校庭とかで遊んでんのに、一足先にバスで帰るみたいな。

ーーつらみ

小林くん:つらみ…。

あと、中学生・高校生らへんは家でゲームもしくは外でサッカーとか、おれらは普通にやってたけどね。長野市まで出てた子は出てたって感じかな〜。

 

小林くんの一週間

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この週の予定だそうです。ジモコロの柿次郎さんたちと山梨〜長野間を回っているところということで、旅行や取材メインの予定。

会社勤めのわたしからすると、「長期休暇かな?」という感じですね。(土曜日のところ、「休」に二十線引いてあるのが気になる)

小林くんはフリーランスで活動しているため、写真やデザインの仕事および農作業の入り具合によってはかなり忙しい時もあるそう。


 

小林くんのかばんの中身

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大きなリュックには、筆記用具やカメラなどの道具のほか、トラベルセットのようなものが。パンツ??

小林くん:風呂・銭湯好きなのでいつでも湯に浸かれる用意はしてある。今はなきJUSCOの袋がお気に入り。


 

自由を求める心

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ーーおじいさんやおばあさんたちと接していて、どういうことを感じますか?

小林くん:うちらはもう何やっても自由みたいなところがあるし、どこ行ったっていいしね。でもじいちゃんばあちゃんたちは圧倒的に不便で不自由な、全然違う時代に育ってきたわけじゃん。でもふとした瞬間に、「すげえうちらよりも自由に生活してるなぁ」って思うっていうか…。言葉遣いもそうだし、行動だとか買うものだとか、なんか縛られてない感じがすごいあって、そこにかっこよさを感じるというか。

おれは正直普段生活していて生きづらさを感じていて、この世に(笑)。これをもっとこう、肩ひじ張らず楽にいきたいなぁってのがあって。まず自分に自信がなくて、自分に自信がないと生活ってしづらいと言うか…。

ーーわかりますよ…。あれ…っ?でもなんで!?なんで自信ないんですか!!

小林くん:なんで…?なんでないか…??

ーーサッカー部のキャプテンだったんだろうっ?!(笑)

小林くん:サッカー部のキャプテンだった(笑)。それもでも、うちの学校はサッカー経験者がいなかった弱小サッカー部だったから、しょうがなくって感じだったよ(笑)。

ーー…なんか、自信がないっていうのがとても意外に感じます。この世に息苦しさを感じる、みたいなことでしょうか?

小林くん:そうそう、そういうのをすごい感じてて。いや、まぁいつの時代も大変だとは思うんだけど(笑)。

ーーたしかに年配の人たちは、若者の感じる「そういうの」を超えてしまっているのかもしれないですね。「もう、どんとこいみたいな安心感」がある気がします。そういうものに憧れるような気持ちがあるんでしょうか。

小林くん:それはあるね〜。なんていうかさ、人生っていうやつがあるとしたら、楽か苦かで言えばベースは「苦」だと思ってて…。そんな中で今これだけ楽しくやれてるから、すげーありがたくはあるよね…。

 

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な、なんかネガティヴ〜〜!でもその出発点、すごく共感できます…。


 

小林くん:あと、今は雑誌もそうだしスマホもそうだしテレビもそうなんだけど、ありとあらゆる情報がさ、集まってきてるから。

そうやっていろんな情報にがんじがらめにされてると、たまに生きづらさを感じることがあったりとかね。

 

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そういえば、小林くんってSNSをほとんどやっていないんです。

いずれインスタグラムみたいなのを始めて欲しいなあ、なんていう気持ちはありますが…。


 

ーーたしかに今の時代、大胆な行動を取るより先に調べて情報を得てしまうみたいな感じはあるかもしれないです。小さくまとまりがちというか。

小林さん:情報は多いよねぇ。でもそれゆえの、なんていうか…良い生活ってのもあると思うから。「それはどういう生活かなぁ」っていうのを考えながらやってるね。
今って、勝手に色々つながりやすいじゃん。なんか単純につながりは多ければ多いほどいいものみたいな感じになってるけど、全然おれはそうは思ってなくて。今関わってる人をできるだけ大切にしていきたいって思ってるよ。

ーー自分たちがどうやったらよりよく生きられるかのヒントを探しているようなところもあるのでしょうか?

小林くん:いやもうさ~~。まさにそれっていうか。「ほんと生きていくのってたいへんだな~」みたいな。てかおれ、今だいぶアレなの。楽した生活をしてるの!世間でふつうに働いてる会社勤めの方々と比べたら、天国みたいな生活をしてるのに、それでもなお大変なことがあったりと!

ーーまぁ生きてりゃねぇ〜。

 


人生〜


 

小林くん:でもさ、奥信濃の暮らしって絶対楽じゃないけど、なんやかんやで、結局ここ以外にないと思うんだよね。とりあえず、奥信濃ってとこは死ぬまでの時間をいい感じに使えるとこって感じだね~。

 

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肩肘張らずに「楽にいきたい」の結論が、一見過酷な奥信濃で暮らすことなの!?

頭の上にハテナがたくさん出てきました。

多くの人が抱える「地元問題」を、小林くんはまさかの視点で解決している…。


 

おじいさんおばあさん

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こちらは小林くんと、祖母のひさ江さんの様子だそう。

こんな孫が欲しい!と思いましたが、そもそも冷静に、自分自身の祖母との関係を見直すきっかけになるなぁ。

ちなみにひさ江おばあさんからは常に「ヒゲを剃れ」と言われているそうです。


 

ーーおじいさんやおばあさんたちは、小林くんの目にどういう風にうつっていますか?

小林くん:まずやっぱり生活力が高い。自分たちで食うもの作れたりっていうのもそうだし、何があっても大丈夫っていうか。

奥信濃ってとこは雪がめちゃめちゃ降るんだけど、そんなかでずっと生活してきてるし、あらゆることへの対応力はめちゃくちゃ高いというか。それはいいなあって。やっぱ、いきいきしてるよね。生きてるっていう感じがするよね。

 

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おじいさん・おばあさんを、タフさと知恵をもった「自由人」として捉える小林くんの視点は、普段よく聞かれる「高齢者」についてのイメージとは真逆のもの。

そんな小林くんの視点で切り取られた、奥信濃に暮らすありのままのおじいさんやおばあさんたちの姿は、今後ますますの高齢化社会に向かっていく日本社会に対して、一つの希望を提示しているような気がします。

リスペクトがあるからこそ、あのようにクールなお年寄り像をカメラにおさめることができるんですね。


 

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そして小林くんに漂うなぞのゆるさ…!これが親しみやすさの秘訣なのか!?


 

移住者と地元の人

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ーー小林くん、聞いてくれるかいっ…!

小林くん:どしたのー?

ーー近年いろいろな側面で田舎や自然がフィーチャーされていると思うのですが、「都会人の思う田舎の理想像」みたいなものが無意識に根底にあって、「おしゃれに、小綺麗にみせる」といったような流れが多く見られるような気がして…。田舎出身の自分としてはたまに「これでいいのかな…」というような気持ちになるときがあります!!小林くんはどう思いますか?

小林くん:そうだねぇ…。そういう感情が湧いてきたら、「じゃあこういうのがいいよね」っていう発信なり、なにか形にするっていうのが、やっぱ一番いいって思うっていうか…。

おれもいろんなメディアとかを見てて、もともと地元の人間である自分がそういう活動を出来てないってことが悔しいと思うことはあって。
田舎をパッケージングしているような人たちの活動を否定するっていうよりも、地元生まれで地元で育ってきたやつらがそうできてないっていうことが、一人間として悔しかったっていうかね。

ーーなるほど。

小林くん:だから、言うだけっていうのはしないようにしてる。

もし違和感を感じたら、自分の近くにいる人たちと共有してみるとかね。で、そういう違和感とかを感じてるっていうことはさ、その原因について考えて自分たちの思いを実現できたら、今の場所がきっともっと住みやすい場所になるし、生活しやすくなると思うから、どんどんそうやっていくのがいいと思うっていうか。

人が作ったものとか活動とかソーシャルとかリアルな現場とかを見て「んっ?」って違和感を持つのがストレスになっちゃうこととか、きっとあると思うからね。それをちょっとずつ減らしてくためにも、たとえば自分の思ってることを、活動してる人たちに直接伝えて「もっとこうしましょうよ!」とか言って変えてくのもいいし、まったく別で何かを動かしていくのもいいし。

 


ちゃんと行動していかなきゃ、という気持ちに!


 

飯山の若衆

ーー小林くんは以前、飯山の若衆(わけしょ)を集めたイベント「若ショック」に携わっていましたよね。そういった活動の裏にはどのような思いがあったのでしょうか?

 

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このフライヤーのデザインも小林くんが担当。


 

小林くん:一回外にでて帰ってきて、こうやってなんかやってると、めっちゃチヤホヤしてもらえるの、飯山の人に。「戻ってきてえらいねぇ」って感じで。

でも、地元にずっといる子達はそんなチヤホヤしてもらってないというか…。
こっちとしては、地元にあの子達がいてくれたから帰ってこれてるわけで。だから、地元に残っている子たちとなにかやりたいなっていうのがあって。

 

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飯山市若者会議、「若ショック」というイベントの中で、小林くんたちは飯山初のトークイベントを主催。

飯山で暮らしている様々な立場の人たちを交えて交流や討論をするというもので、「マイルドヤンキー×インテリ公務員」「さとり世代×強欲世代」など、登壇者のジャンルは様々。

普段交流のない層どうしがコミュニケーションすることで生まれる面白さを前面に押し出したイベントとなりました。


 

小林くん:あと最近はさ、いろんなところに出てってたけど、そろそろ地元に帰ってこようかなみたいな友達も結構いるわけ。で農協に就職したり市役所いったりサラリーマンだったり。

でも結構みんな昔話とかしてて、あんま現状満足してないみたいな。であれば、好きな事やればいいんだと思うんだけど、なんかいろいろあるみたいで…。
自分はこうやってやってくって決めて納得してるならいいんだけど、ひたすら不満を垂れ流してる同世代もいるんだよね…。まだ若いのにさ。

ーーどっちの気持ちもわかる気がするので、妙に落ち込んできました。

小林くん:もっとお互いさ、嚙みつき合いたいんだけど、でももうみんなやっぱさぁ、ちょっとおとなになってきて…。もうみんな、傷つき合いたくないっていうか、ペロペロペロペロしかしないんだよ…。それがさぁ、たまにすごく寂しくなるというか、孤独を感じるよね…。

しかもさ、その子たちもさ、「なおちゃんはすごいよ…。そのまま、がんばってよ…。」って、全然噛み付いてこない(笑)!ただヨシヨシしてくれるだけっていうかさ…。

 

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ヨシヨシ…!


 

小林くん:そしたらさァ、こっちも嚙み付けないじゃん…。

ーーくぅ

小林くん:でもさぁ、おれもべつに否定がしたいわけじゃなくて、ただあいつらと一緒に中学とか高校の時のノリのまま奥信濃で楽しくやっていきたいってだけで。

「面白くねえ!」とか言って付き合うのをやめて都会に出て行ったら、今までと一緒なわけで。そうじゃなくて、あいつらと一緒に、面白さを探っていきたいなっていうか…。

結構、みんなは「めんどくさい」って嫌いになってると思うよおれのこと…。

 


そんな〜


 

ーー自分で変えることって結構難しいですよね。でも、自分で変えないとだれも変えてくれないじゃないですか…。つらい…。でもそういう人は、小林くんの周りだけじゃなくても相当多いですよ。自分も結構そうかも…。

小林くん:いろいろ面白いことやってこうって人はやっぱ、こっちだと少ないわけで…。それこそ松本で若い子たちが集まってなんかやろうとしてるのとか見ると、超ーいいもんね…。泣きそうになる。うらやましすぎて!

 


松本の若い子たちも、小林くんの活動をみて泣きそうになったりしてますよ。


 

小林くん:好きな人、好きじゃない人含めて、どこまで相手の事を考えられるかってとこだよねぇ…。

ーーくぅ

 

奥信濃とおれ

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なにかと「〜とおれ」というキャプションをつけられていることが多い気がする小林くん。


 

ーー自分なりの使命に思うことはありますか?

小林くん:おれが生まれ育った場所で、今も住んでる三郷って地区があるんだけど、そこで死ぬまで生活してくっていう、ただそれだけ。

 


シンプル


 

小林くん:で、それのためにできることを、これから一つずつコツコツやっていくっていう感じかな。

なんかいろいろ調べたら、うちの仏壇に入ってる骨の一番昔の人が延享何年とか…。1700年代くらいの人が一番最初の仏さんっていうか。そんくらいからいるってことだから、それをおれの代で終わらしちゃうのはなんかちょっともったいないかなーっていうか、申し訳ないなあって。たぶん10代目?くらい、自分が。

でも今の現状だと、そこに子供が産まれて育っていくには厳しいものがあると思うから、もっと自分の息子とか孫とかが、生活しやすいようにしていきたいね~。
いや、今のはちょっと盛った。自分のことで精一杯。

 


小林くんは都会の洗練された文化を取り入れながらも、考え方自体はすごくシンプル。

言葉が悪いので恐縮ですが、地味さというかジジくさいというか…。でも、そういうところが説得力になっていると思うんです。

そういえばこの間友人が、「小林くんがワケわかんない理由で飯山を捨てるとか言い出したらみんなでボコボコにする」って言っていたのを思い出しました。


 

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こちらは、小林くんの動き(獅子舞)を真似する友人たちの様子。


 

軸をさして生きる

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小林くん:あと、いけてる男になりたいっていう…。

 


なになに?


 

小林くん:まず

ーーまず?

小林くん:まずねぇ、田舎で面白いことをやるのが難しいっていうのあるじゃん。圧倒的に難しがられてて、田舎から若いやつが出てってて…ってなってる状況のなかで、こっちでなんか面白いことができればさ、って思う。
でもよくよく考えるとね、奥信濃で暮らしてる人たちってかなり変わってるというか、おもしろいとこやイケてるとこがいっぱいあるのよ。
だって、ここで生活してる人ってのはすごいよ!よくやってるなって思うもん。

もう奥信濃で暮らしてるってことだけでひとつポテンシャルになると思ってて。そういうのを奥信濃で暮らしてる若者と共有していきたいね。

 

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こちらは小林くんが撮影した獅子舞のようすだそう。祭りの緊張感がありますね。



小林くん:まあ、そういった意味でもなんだかんだ生活しやすいっていうか。

結局、おれは一本軸が欲しくて。生きてく上で。じゃないとこう、フワフワしながらだとすげぇ生活しづらくて、生きづらくて…。だから一本芯をグサっとさして。それがまぁ、ここで生きてるということなんだけど。そしたらもう、難しいことを考えなくてよくなる。

 


その発想はなかった〜。


 

小林くん:こっちで住む上で大変なこともあるけど、いろんなとこでフワフワ生活するよりは楽かなぁって。

 


とにかくバランス感覚が絶妙すぎる小林くん。

毎回「そうきたか」の連続で、聴いたことのないリミックスのようです…。

なんだか情報量が多すぎるな…?サンプリングの妙〜!


 

その土地で暮らす

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ーー小林くんが大切にしていることってありますか?

小林くん:昔からあった当たり前のこととか常識みたいなのが、高度経済成長とかでこう、グラっとなって…。でもその「当たり前のこと」をしっかりやればいい話なのかな、ってのがあって。

昔からずーっとある風習とか食べ物とか生活とか…それに自信を持って「やっぱこれがいいよね。」って思って、そこで生活していくっていうか…。やっぱ、その土地に足をつけて生きていくっていうのが日本人的には一番合ってる気がするというか。どこでも生活できる民族っていうよりは、その土地との結びつきって結構強いと思うんだよね。

ーーなるほどなァ〜。それってある種「縛られている」感覚かもしれないけど、むしろ安心にも繋がるのかなっていうのを、話していて思いました。
 


自由になりたくて外へ出ていく人が目立つぶん、ベクトルが内へ向くことの良さに目を向けている人っていうのは果たしてどれくらいいるんだろう?



小林くん:もちろん正解とか不正解とかはないんだけど、どこいってもいいしどこで暮らしてもいいし何をしてもいいっていう完全自由な感じはひずみをうむというか、実はあんまよくないんじゃないかな、自分たちと合ってないんじゃないかな、っていう気持ちがあって。

でもおれも、帰ってきたからっていってずっと奥信濃にいるわけじゃなくて、車や新幹線使ってしょっちゅうどっか行ってるしね。
便利なところは便利になってきてるし、使えるもんはどんどん増えてってるから、その時代その時代にあったいい生活の仕方があるような気がするし、それを「なんだろう」って考えて、自分なりに、自分らしくその土地で生活していくのがいいんじゃないかなぁ…。
ーーわたしは地元に戻りたくないなぁと常々思っているんですが、結局戻ったりするのかもしれません。ウーン…。
小林くんその時々で自分の一番生活しやすい場所ってのがあるってことだと思うから、それは別にいいんだと思うよ〜。地元にこだわらなくても、その土地土地で。

 

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うーん、わたしは地元のことを考えると高確率で頭がモゲそうになります。でも小林くんと話していると、今まで逃げてきた自分の地元にもベクトルが向いてくるので不思議。


 

ーーここで奥信濃の方言をひとつ!

小林くん:ふんなことせわれたってえっぺあるわさ!

ーー翻訳お願いします!

小林くん:「そんなこと言われたっていっぱいあるよ〜!」

 


すかさず方言が出てくる小林くん。

対してわたしの場合、方言は耳にしてきたはずなのに考えないと出てこない…。

外国人の2世3世が、両親や祖父母の話す言葉を「聞けるけど話せない」みたいな感覚に似ているような気がしました。なんだか寂しさもある。

ちなみにわたしの地元の方言だと、さっきのやつはきっとこんな感じ。

「ほーだこといわれたっておめ、いっぺぇあんだー!」。違ってたら教えて那須塩原の人!


 

ヒップホップが好き

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こちらはお馴染み、ひさ江おばあさんの写真。わたしも剥離骨折したときにこの治療受けたな〜。


 

ーーこれからどんな人たちが「来る」と思いますか?

小林くん:おれはやっぱヒップホップが好きだから、ヒップホップの同世代もしくは下の人たちは結構注目してるというか、気になってる部分はあって。

『鶴と亀』って、ああいう形でZINEっていうか、フリーペーパーって感じでやってるけど、もともとはヒップホップやストリートカルチャーのZINEとかフリーペ-パーみたいのが好きで、そういうのを作りたいと思ってて。

そういう人たちが作るフリーペーパーやZINEっていうのは、自分たちが生活している所の身の回りのことを画にしたりだとか、写真撮ったりだとかリリックにしたりだとかしてて。

それを奥信濃でやろうとしたときに、やっぱじいちゃんとかばあちゃんはスルーできないというか。じいちゃんたちが入ってるからああいう形になってるけど、ヒップホップみたいなつもりでやってて。

ーーわたしもヒップホップがすごく好きなので、共感できる部分がたくさんあります。たしかに「地元」っていうキーワードはヒップホップ的ですよね。『鶴と亀』の根底にあるヒップホップのスタイルは、単なる「見せ方」などではなく、小林くんなりのヒップホップの体現の仕方なんですね…。レペゼン…奥信濃…!

小林くん:ヒップホップはやっぱりその、自分が育ってきた環境やルーツとかそういうところが大事な部分かなぁとおれは思ってて。で、きっといわゆる世間一般のヒップホップってこう、ゲトーな感じの雰囲気だったりとかブラックな感じとか、あとは都会的なおしゃれな感じだとか、そういうのが今のところ強いけど、ど田舎のばあちゃん子のおれがそういう雰囲気を出そうとしても無理っていうか。だからこそやっぱり、自分たちらしいスタイルを築いてるヒップホップはアツいなって思うよね。

 


その時代、その土地ならではの様々なヒップホップのありかたについて、今後注目していくと色々なおもしろい表現に出会えそうです。


 

松本の気になるところ

小林くん「松本クラブキッズ」あたりはヤバいと思うよ。同世代の遊んでるヤツらの中でも久々にこんなにエネルギッシュに遊んでるヤツらがいるなぁって、ちょっとなんか悔しさを感じるくらい。ビシバシ感じる…。ヤバさを。

一度も外に出たことがなくてずっと松本にいる子もいるのに、それで地元の良さもわかってるっていうのがさ~。

 


松本クラブキッズとは、かつてメンバーが若かりし頃、松本市内の音の鳴る場所で元気に遊ぶ女子数名を束ねて「松本のクラブキッズ」と自称し始めたことがはじまりの小さなクルー。

全員もうキッズではありませんが、現在の主だった活動としては、県内外のミュージックシーンに頻繁に出没しつつ、DJやバンド、イベントやデザイン業を行ったり、りんご音楽祭の中夜祭を仕切ったり、フロアを盛り上げたりしています。


 

小林くんの野望

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こちらは鶴と亀のグッズ撮影の様子。

この時、外野であるわたしのワイシャツになぜか除雪車のオイルのシミがつきました。落ちにくかったです。


 

小林くん:おれもよく、「外に出たからこそ街の良さがわかる」って言われて。もちろんそれはそうなんだけど、出れない人間や、出てない人間もやっぱりいるじゃん。でも、その人たちだってヤバいわけでさ〜。

「一回外に出なきゃあ地元を盛り上げられない」みたいなのをやっぱ上の世代の人たちは言ってて。でも、そうじゃない人もいるわけ。

だから、そういう人たちにめっちゃ興味あるね。

なんか、世間のカッコイイとかイケてるってイメージがわりと決まっちゃってるって言うか…。そういうのだけじゃないじゃん!みたいなことを感じるかな。やっぱ、まだまだ地方も「カッコイイ」「おもしろい」はあると思うし。
自分は『鶴と亀』以外にも面白いことや面白い人をこれから発信していきたいなぁって感じで、その準備を着々と、生活しながら進めてるって感じかな。

でも、地方にこだわるつもりもないっていうか。都会のほうがかっこいいとか、地方のほうがかっこいいとかそういうことが言いたいわけじゃなくて、自分たちの足元にかっこいいものというか、いけてるものがあったりとか…。結構身近なとこに、そういう大事な要素があると思ってて。それはもうほんと、地方だからとか都会だからとか関係ないと思ってるから。

ーーたしかに、そうやってこだわりすぎちゃうと派閥みたいになってきちゃいますよね。喧嘩売りたいわけじゃないですもんね。

小林くん:全然。全然そんなことない。ってか、おれふつうに都会も好きだし。月に何度も遊びに行くし。いやー、ほんとさっきからも言ってるけどさ、奥信濃で死ぬまで生活してくっていう、ただそれだけなのよ。To Live & Die In OKUSHINANOよ。

 


きたか、2Pac…!



小林くん:そのために、まず奥信濃のことを発信するってこと。そして、都会とか地方とか場所関係なく、おもしろいこととか、カッコイイことを奥信濃から発信して、で、奥信濃はそれが出来る場所ってことを表現していくってのが、今一番大事なことかなーと思ってる。

 

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ここでなんと偶然にも、街を探検していたジモコロ編集長柿次郎さんたちがお店にやってきた!


 

小林くん:!!あれェっ?!いっしーさんがいる…!えっ柿さんもいない?!
ーーお〜い!

 

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こちらはジモコロ編集長の柿次郎さんと、バックパッカーズジャパンのいっしーさん。お二人で松本市内観光をしているところでした。


 

小林くん:とにかくさ、じいちゃんばあちゃんのほうが、カッ…
 

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カッ


 

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小林くん:……じいちゃんばあちゃんのほうが…いいとか、…若いやつがださいとか、そういうのを言いたいわけじゃない!!(笑)

ーー…モグモグ

 


柿次郎さん御一行の登場とともになんだか和気あいあいとしてしまったため、半ば強制的に取材が終了(笑)!

みなさん松本の街を楽しんでいただけたとのことでしたので、本当に嬉しいです!みんなァ〜!


 

 

さて

いつものごとく「取材を終えて」のまとめに入りたいところなのですが、今回はここでは終わりません!

冒頭でもほんのりと触れましたが、小林くんによる飯山雑談ツアー編に続きます。

「田舎と若者」という使い古された「元ネタ」を斬新にサンプリング&リミックスし続けている小林くん。

この絶妙なキャラクターを育んだ土地は、一体どんなところなんでしょうか。

ということで、続きはまた次回!ごきげんよう!

 

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(取材・写真:えづれ 写真提供:小林くん 撮影協力:The Source Diner)

B!
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