Category : meet the knower 記事
吉岡 周流(よしおか ちかる)
1988年生まれ 北海道出身
現・東家おかみ
江刺 里花(えさし りか)
1994年生まれ 栃木県出身
次期・東家おかみ
「松本を、暮らすように旅する」
宿泊に、イベントに
能動的に過ごす人にはいろいろなチャンスがあります
さまざまな表現者が集まります
自分もなにか表現できるかも
ときどき近所の誰かが、ほんの少し顔をだしてくれたりします
刺激を求めてる人もゆっくり過ごしたい人も、自分のペースで楽しめる場所です
松本市にあるゲストハウス東家(あずまや)さんは、民家を改装した作りになっており、中庭に井戸もあります。
現在メインのスタッフは3人ですが、他にアルバイトのスタッフも数人いるそうです。
中には東家を気に入り、県外から通ってくれていた人もいたとか。
ーー今の運営スタッフは女性が多いですが、大丈夫なんでしょうか?
周流さん:番犬がいるよ。
ーーえっ?
周流さん:番犬だよ。
「女の子ばかりでは危ないから」ということで、オーナーの大島さんが「番犬」を住まわせているそうです。その正体は…
江刺さん:いくま
知る人ぞ知る、スキンヘッドのバンドマンであるいくまさんが「番犬」こと東家の守り神。
夜中にみたら、確かにこわいかも…。
ーー江刺さんは栃木県出身なのですが、実はわたしと幼稚園から中学校まで同じなんです。栃木から信州に来る人ってあんまりいないので、本当にびっくりです。お互いに進学を期に長野県に越してきました。
江刺さん:これはかなり運命的なものを感じるね。
余談になりますが、ライターえづれと江刺さんとの再会の場はKnower(s)!
松本で面白いことがしたいという思いでKnower(s)を訪れていただいた際に、偶然再会することができました。
ーー周流さんは、松本に来る前は何をしていたんでしょうか?
周流さん:もともとずっとアーティストとしてものづくりをしてて、ここを知ったのは大町の原始感覚美術祭に出展したことがきっかけだったかな。
そこで知り合った人に、「ゲストハウスだけど、それ以上にものづくりのできる場所があるぞ」って東家を紹介されました。
これまでは刺繍、イラストの展示をして、今年になってから服作りを始めて、今は服を作ったりデザインしたりしてるけど、自分は縫製技術があんまりないから、作るほうはちゃんとした人に頼んで、それを販売したりしようかなと思っているんだけど。
周流さんが進めている自身のブランドGrün Untenの缶バッジ
周流さん:でも、わたしは自分がアーティストだって思ってないなぁっていうか。アーティストを目指して大町に来たし、美術祭にも応募しまくってたけど、なんかわたしは去年の秋頃から自分はもう作っていくだけの情熱も才能もないな、って見切っちゃったから、そういう方向にはいかないって思っちゃった。自分はプロデュース側や、場を作っていく側に回ろうという思いです。
それで最近ビジネス関係とかそういうことばっかり勉強したりそういう話ばっかりしてたんですけど、このあいだ大町の麻倉の展示に行って。そこで思ったのは、なんていうか土くさい感じはあるけど、作る方の楽しさについてとか…。たとえそれで食っていけなくてもアーティストって思うこととかは大事だなって。ライスワークになってなくても、それを忘れないことってすごい大事だなと思ったよ。
ーー日本だとアーティストですって言うことが憚られる感じはありますよね。人があっと驚くような珍しいものが作れなくても、表現することって大事だなとわたしも思います。
周流さん:作り続ける事が大事じゃない。お金になってなくてもいいやって。とにかく、何をしててもそこのチャンネルを忘れちゃいけないっていうか。やっぱり表現することは続けていきたいし、他の表現方法にも挑戦してみたいなと思っています。
表現したい欲って他の欲望と全然違うよね。
ーー周流さんはどんなものに影響を受けていますか?
周流さん:割と範囲が広いからなぁ。いろんなものが好き。場所と、付き合ってる男性によって変わる、すごい(笑)。これって影響されやすすぎるんじゃないかとも思ったけど、なんか別に、それで結構いい結果を出していればいいかなという感じ。
最近恋してない…。やばいぐらいしてない!わたし3ヶ月に一回は恋をしたいんですよ(笑)。これは自分で決めてることで。3ヶ月以上過ぎると枯れてしまう、みたいな(笑)
謙虚で偉そうな人が好き。
周流さんの好きなタイプの想像ができない。
周流さん:松本は何か、すごい「やりやすい街」だなって思うけどね。大町の原始感覚美術祭の流れで松本に来たから、周りにそういう人しかいなかったんだと思うけど、松本って寛大な街だなって思う。
ーー都会だと、周囲が自分より優れているとかそういう価値観に押しつぶされてしまう気がしますね。ちょっと「こういうもの作ってます」っていってもみんなも作っていたり、クオリティの高いものを作れる人がたくさんいたり…。それに、そもそも他人にあんまり興味もないみたいな場合が多いような気がして、それを共有する機会とかもない気がしました。こっちだと、変わったことをやってると面白がってもらいやすい感じもある気がします。気軽に出しやすいというか。
周流さん:表現したい欲がめっちゃある街だよね、松本って。
ーー東家はどういう場所でしょうか?
周流さん:日々の憩いの場。
江刺さん:きた人を見てると、「落ち着く」「おばあちゃんちみたい」とかそういう反応は多いかも。「小物がかわいい」とか。
キッチンが家みたいだからみんなすごい料理とかしてくれて嬉しい。宿泊客の人たちみんなで突発的にごはんを食べる流れになったりとか、そういうのも楽しくて好き。
ーーそういう偶然を楽しめる場所でもあるんですね。
江刺さん:いろいろなジャンルの人が行き交って、お互いのことを探って新しい価値観とかが生まれていくのを見ているから、すごいチープな言葉で言っちゃうと「いいコミュニティの場」みたいな感じ。そういう言葉あまり使いたくないけど…。
ただ過ごして終わりとかじゃなくて、いつもそこから何か新しいものが始まったり、誰かが新しいことに気づいたりして、すごい生産性のある場所だと思う。あとなんか、来る人も完全に受け身なわけじゃなくて、「自分からなにか」みたいなのを持ってるからすごいうまくいくんだと思う。「こちらを楽しませてくれ」みたいなのに答えたり、積極的にイベントに誘ったりする場所もあると思うんだけど、東家は基本「気が向いたらどうぞ」的なスタンスだから、あんまり強く声かけをすることはしないかも。
江刺さん:でも能動性を持っているのにもかかわらず発揮できていない人に関しては、どんどんそういう場を与えていきたい、みたいな感じなのかも。表現を持ってる人はそれを出しやすい場って気がするから、ハードルがすごい低いんじゃないかって思う。気負わず、気軽に自分を出せる。
東家はクラフトフェアに関わりがある人が多く携わっているから、そこからだんだんいろいろな意味での「表現」っていうものにに広がってきたっていう感じはあるのかな。だから、いろいろなタイプの表現者たちに会えるかも。実際お客さんの中ですごい刺激を受けてる人はいる!イベントとかやってると、「実は私もこういうことがやりたくて…」って話し始める人もいるから、「そういう『実は』みたいなのを引き出してるのか、東家…!」みたいな気持ちになるときはある。
でも基本は放置主義だから、刺激を求めてる人もゆっくり過ごしたい人も自分のペースで楽しめる場所かな。
周流さん:東家の事業計画書に、「一人一人が審美眼を持って、能動性を持つことでコンパスが動きだすから、そういう場所でありたい」っていうのがあるんだよね。この台湾の話が出たのが2月末で。わたしが海外で60年代デザインを広めたいと思ってて、それを大島さんに言ったんだよね。東家のコンセプトである審美眼のこととかを含めて海外で事業をやりたいって言ったら大島さんが、東家としてやれば一人でやるよりも心強いし、流れを断ち切るよりも、それを広げる方がいいじゃん、みたいな感じで言ってくれて。
ーーなぜ台湾を選んだのでしょうか?
周流さん:台湾盛り上がってるし、東家のこのままの流れを、台湾だったら続けられそうって思ったから。
ーー江刺さんが松本東家のおかみになるわけですね。
江刺さん:わたしは松本の東家が大好きだし、ここでずっと働きたいなと思って。これをきっかけに東家にしっかり関われるようになったから嬉しい。
大島さん(写真左)はみんなの相談役。
それぞれ違う3人ですが、とてもいいバランスで動けているそうです。
周流さんと江刺さんの2人は、2号店に向けて台湾に視察に行きました。
以前東家に宿泊した台湾の女性が、現地を案内してくれたそうです。
江刺さん:今後は合同会社で、みんな代表社員っていう形をとる予定。
ーーみんな社員なんですね。就職!
周流さん:就職っていうよりは起業って感じだけどね。
月 12:00 -14:00 昼寝・掃除 / 16:00 チェックイン / 22:00 業務終了
火 12:00 -14:00 掃除・The Sourceに行く / 16:00 チェックイン / 22:00 業務終了
水 14:00 -16:00 おやつ / 16:00 チェックイン / 20:00生春巻きパーティ / 22:00 業務終了
木 12:00 -14:00 冷やし中華・昼寝・掃除 / 14:00 -16:00 おやつ / 22:00 業務終了 〜 ギブミーリトルモアに行く
金 12:00 -14:00 掃除 / 16:00 チェックイン(忙) / 22:00 業務終了
土 12:00 -14:00 掃除(忙) / 16:00 チェックイン(忙) / 20:00 東家会議 / 22:00 業務終了
日 12:00 -14:00 掃除(忙) / 16:00 チェックイン(忙) / 22:00 業務終了
東家の一週間(例)のようす。
近所のレストランに食べにいったり、東家でご飯会ををしたり…なんだか楽しそうです。
週末はたくさんのお客さんが来るので、忙しい模様です。
かわいいかばんの中には、ポーチやお財布、ケータイが入っています。
水色と白のカプセルは小物入れだそうです。
ピンク色のリップクリームはLaveraのもの。チェコで購入したそうで、ヨーロッパで買うと安いんだとか!
東家で展示をしたデリシャスウィートスのにんげんトートバッグはお気に入りだそう。
お財布、ケータイ、リップクリームなどの必需品のみ。
いつもあまり物は携帯しないとのこと。この日は縄手通りのお祭りのチケットが入っていました。
周流さん:明日栞日に行ってみようと思ってた!まだ新しくなってから行ってないから。みんな行ってるじゃん!
あと、水泳習えるところが気になるな。北海道って夏が短いからあんまり泳ぐって事がないんだよね。だから泳げない人が多い。
ーー私も泳げません。
江刺さん:最近のお気に入りの場所がMomo cafeだったから、カフェがなくなっちゃうの残念すぎる!今までコーヒーに投資していた分で、ジャム買います!
東家から徒歩1分のChez Momoさんは、改装に伴いカフェ営業をなくして、コンフィチュールとお菓子の販売に限定するそうです。
周流さん:次は東南アジアに開けるようにすること。
江刺さん:早いな!
江刺さん:わたしは風呂のこととか考えてる。5年後東家で風呂やりたいなってこととか。この場所がすごい好きだから、できれば隣に作って日帰り入浴とかやりたい…。もともとある銭湯を継ぐとかも考えたんだけど、あ、もう東家で風呂やればいいじゃん…って切り替わった(笑)。
銭湯を作るってなんだか大変そうですが、家の近くに銭湯ができたら嬉しい。
周流さん:60年代コンセプトの複合的なスペースをやる。わたしが行ったところの感じだと、台湾は比較的プレーンなカルチャーに感じて。洋服とかもプレーンな感じだったから、何か新しい事を、「爆弾を落とす」みたいな感じでやるのはすごく楽しそうだと思ったよ。ゲストハウスメインにやろうと思ってるわけじゃないんだよね。ゲストハウスはやるけど、どうせならもっと複合的な施設をやりたいと思ってて。ギャラリーと、イベントスペースと、服屋と、ちっちゃいのをたくさん。
ーー面白そう。すごくいいと思います!
周流さん:流れとして考えているのは、8月にクラウドファンディングでお金を集めて、9月くらいにわたしが移動して、住んじゃってそっから物件さがして改装工事して…年内までにオープンさせられればいいかな、と。
東家の理念の「審美眼」を育てるっていうのを、台湾でも続けていきたいですね。
自分をうまく表現できないと、息苦しさを感じます。それは我々が日常的に行っているコミュニケーションのなかでも言えることです。
人と違っていなくても、人と同じじゃなくってもいい。
そのままの自分から生まれる表現は全然かっこよくないかもしれないけれど、表現することは自分の可能性や願望に気づく重要な一歩になることもあります。
自分が快適に暮らすことのできる場所を探したり、あるいは今いるところを素敵な場所にする取り組みも、じつは表現活動の一環なのかもしれません。
ゲストハウス東家は単なる宿ではなく、暮らしを通した表現の多様性を提供したり、さまざまなつながりや交流を育んでいる場所でした。次はどんな一手が飛び出すのか、東家さんの今後から目がはなせませんね。
それではまた次回、ごきげんよう!
ゲストハウス東家
住所:〒390-0874 長野県松本市大手4丁目5−1
今後の2号店情報はこちらから!
(取材:えづれ / なかざわ 写真:なかざわ 写真提供:周流さん)
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