Category : meet the knower 記事
今月から新しく、インタビュー企画がはじまりました!
その名も "Meet the Knower" 。
弊社の運営するコワーキングスペースKnower(s)には、知識や情報を持った人(knower)たちが集まり、アイディアを交換し実現できるクリエイティブなプラットフォームになるようにという意味合いが込められています。
この企画では、身の回りで面白い取り組みをされているknowerたちに焦点をあて、あらゆる人に楽しんでもらえるような情報をシェアしていきます。
つぎはどんなknowerたちに出会えるのか、楽しみにしながら更新していきたいと思います。
みなさ〜ん
本読んでますかー。
おっ、「最近本読んでないなあ〜」って声が聞こえてきた気がする。ざわざわ。
本に夢中だったあのころの幻影がさわぎだしている気がする。「おれも〜」つって。
わたしも含めですが、どうにか本を読むことを習慣づけたいものです。
ということで、今回インタビューさせていただいたのは、Knower(s)でインタ—ンシップをしている越智 風花(おち ふうか)さん。
なんと越智さんは、現役大学生でありながら松本市の浅間温泉で「おんせんブックス」という名前の本屋さんを営んでいらっしゃいます。
本をたくさん読む人にもさほどに読まない人にも、ぜひ訪れていただきたい場所です!
それでは行ってみましょう。
越智 風花(おち ふうか)
1993年生まれ 愛媛県出身
現在信州大学経済学部に在学中
自由に使ってください
本を買ってください(笑)
飲食物の持ち込み可能です
好きに本をよんでいただいて大丈夫です
おまかせです
利益についてはあまり考えていません
おんせんブックスが位置するのは、浅間温泉の人気スポット「琵琶の湯」から徒歩1分の場所。
目の前には湧き水もありました。市街地からは遠いですが、その周囲はかなり雰囲気があってとてもいい感じです。
ーーこの場所はもともとどういった場所だったのでしょうか。
越智さん:もともと下宿で、でも空き家になってたんですよ。そこを、カンデラゲストハウスの石川さんという人が再び下宿として再開したんです。もし誰も入らなければ、夏には取り壊されるという物件で。
こちらの下宿は「篶竹(すずたけ)荘」という名前で、オーナーの石川さんが命名。
松本の伝統工芸である「みすず細工」が由来だそうです。篶竹荘は昔ながらの建物で、とても雰囲気がある作りになっていました。
住居スペースは2階、おんせんブックスは1階にあります。6畳ほどのちいさなスペースに、床の間を改造した本棚、ちゃぶ台、そして階段下収納を利用した番台(?)が。
普段はこのように、越智さんが収納されているようです。
「おんせんブックス」という名前はもちろん、浅間温泉から。
越智さん:最初はKnower(s)のなかで開業しようと思ってたんですけど、ここの方が面白がってもらえますね。
貸本屋や図書館と思っている人もいて…。本屋なんですけどね。
ロゴの由来は、名前の「風花」という漢字をイラスト風に崩した物だそうです。
この鳥は「オチドリ」という名前。
ーー愛媛から長野ということは、みかんからりんごですね。
越智さん:はい。うどんからそばでもありますね。
ーーなぜ信州に来ることになったのでしょうか?
越智さん:えっと、遠くへ来たくて。大学の候補がいくつかあったんですけど、そのなかでも信州大学が一番遠かったので。
ーー経済学部ということですが、経済を学びたかったのですか?
越智さん:学びたかったですね。もともと社会の先生になりたくて。尊敬していた社会の先生が、経済学部を卒業していたので。でも、信大の経済学部って教員免許が取れないんですよね。そこに関してはもう、まあ、いいやって
…なんか、人文に入ればよかったですね。(笑)後期は授業取ろうと思います。
ーーところで、わたしも信大の人文学部を卒業していて、もともと本は好きだったんですよ。でもめっきり読まなくなってしまいまして…。最近やっと読むようにしているんです。
越智さん:どんな本が好きなんですか?
ーーなんでしょうね…… 好みが統一されていないのでワケがわからないとは思いますが、山田詠美とか村上春樹とかを読んでいますね。笑 最近読んだのは江國香織とか、あとは人と会話をするためにわざわざリチャードブローティガンなんかを読んでみたり…
せっかくなので、越智さんに本を選んでいただくことにしました。
人に選んでもらうと自分では選ばない本を手に取れるので面白いですね。
越智さんの選んでくれた本はこちら!青春っぽいラインナップです。
せっかくなので、こちらの本をお買い上げいたしました!300円。少しずつ読もうと思います。
越智さん:出会いっていうか、気づいた時からそこにあって…..。毎日とか、毎週本屋に行くような両親だったので。
父はミステリーや旅行記、母は小説、弟は当時ラノベばっかり読んでましたね。わたしはエッセイばっかり読んでいますね。小説家の人が書いているエッセイが好きです。
ーー最近読んで、心に残るエッセイはありますか?
越智さん:角田光代さんと穂村弘さんの、「異性」というエッセイが面白かったです。
ーーおおっ!わたしも穂村さんとても好きです。短歌とかもいいんですけど、やっぱりエッセイのちょっと狂っている感がたまりません。「異性」読んでみます。
越智さん:「本、昔は読んでたんだけど、時間がなくて…」という人が多いんですよ。スマホにあてている時間を読書にあてればと思ったりはしますけど…。
越智さんは以前、その辺のあれこれをさぐるため、Knower(s)の定例イベントである「まつもとコネクト」に登壇されました。
そこで得られた意見は様々。
越智さん:東京にいた頃は電車のなかで読んでいたけどこっちだと車移動だからとか、べつに「おとなだから」というわけではない場合もありますね。仕事帰りにカフェに寄って、わざわざ本を読むための時間を作る人もいたり。そういう風に、読むための場所や時間を作らないとだめだっていう方も何人かいらっしゃって。
ーーわかる気がします。わたしもあえてバスにのって通勤してその間に読書したりしていますね。家めっちゃ近いんですけどね。
越智さん:今後お店をもっと遅くまであけたりして、「ここに来て、読む」っていうきっかけになればなぁとは思いますね。
越智さん:オープンしたのは4月1日で、2月中旬頃から1ヶ月半くらい準備しました。去年8月にここに越して来たんですよ。
ーーもともとあたためていたんですか?
越智さん:全然あたたまってなかったんですよ。突然決まって…。妄想で話はずっとしていたんですよ。本屋さんをやりたいっていうこととかも、ここの住人とごはん食べたりしながら話したり。
で、「ここがあるから使えば?」ってずっと言ってもらっていたんですけど、「今じゃないなぁ」って思っていたんです。
でも、やろうと思って、2月に決めて。
ーーなんで「今じゃない」と思っていたのですか?
越智さん:ずっと夢ではあったんですけど、30とか40とか、仕事を経験してお金を貯めてからやるもんだ、と思っていたんですよ。
だけど色々計算してみると、工事とかをしなければそんなに予算がかからずにできることがわかって。
だったら「今でもいいなぁ」と。
遠回りして出版社とか書店で勤めてからじゃなくても。とりあえず、「やる」ことはできるなと。
ーーたしかに。
ーー家具はどこで調達したんですか?
越智さん:本棚に関しては作りました。8000円くらいでしたね。
あのこの辺は、信大の近くのリサイクルショップです。このちゃぶ台も1000円で売ってて、あとこれも買いました。サイズを測らずに買ったんですけど、ぴったりだったので良かったですね。
ーーえっ、この文机ですか。あの店で売ってたんですね!掘り出し物…!
月:10:00 – 12:00 MTG
火: 9:00 – 21:00 学校
水:12:00 – 19:00 Knower(s)当番
木:13:00 – 14:30 学校 / 15:00 – 20:00 おんせんブックス
金:10:30 – 16:10 学校
土:10:00 – 18:00 たいやきふるさと
日:10:00 – 18:00 たいやきふるさと
(※ オープン日時はその時々によって異なりますので、SNSなどでチェックしてみてください!)
現時点では、だいたいこんな感じだそうです。
大学に行ったり、Knower(s)のインタ—ンをしたり、おんせんブックスをあけたり、縄手通りのたい焼き屋さんでアルバイトもしているそうです。
様々な活動をしている模様。
越智さん:勉強はボチボチですね。
大学生なのにって言われることも多いですが、むしろ大学生でいる方が、何かをはじめるリスクは少ないんじゃないでしょうか。
越智さん:あと、やってみてわかったんですけど、大学生ってことが新聞に一番に出るんですよね。太字のところに。
あ、それってすごい効くんだな…って思いました。
狙ってやったわけではないので、むしろ最初は隠したくて。「遊びでしょ」って思われるとか…。
あとやっぱり訊かれるんですけど、「1年で辞めるんでしょ」って…。いまだに。
ーーいまだに隠したいですか?
越智さん:今はもういいや、って思います(笑)
ーー応援してくれる人も多いのでは?
越智さん:はい。「自分に大学生の息子がいるから応援したい」「旦那さんが信大卒だから応援したくて」とかそういう理由で来てくれる人とかもいて、ありがたいですね。
ーー反対はされましたか?
越智さん:両親には一応…。「何やってるの?」って言われました。心配されましたね。でも今は、「もうやっちゃったんだから別に好きにしなさい」、という感じですかね。
ーー応援してくれているんですね。
越智さん:そうですね。
ーーはじめやすい「土壌」のようなものがあったんでしょうか。
越智さん:ここに住んでいろんな人に相談できたっていうのと、場所もあったってことですかね。周りで「こういうのやりたい」っていうのを聞いてくれる人たちがいて。そうするにはどうすればいいかっていうのを一緒に悩んでくれて…。
ーーいいですね〜
越智さん:これは持って来ていただいた本で、「グリム童話 」ですね。たまたま目について、おもしろそうって思って。このなかの二つくらいですね。有名なのは。読んでみたら結構つっこみどころが満載でしたね。
越智さん:「十二人の狩人」っていう話があって、
「なくしていた鍵が見つかれば、新しいのに用はないのだ」
っていう台詞があって。
まあ、元の恋人を思い出して、結婚しようとしていたのをとりやめるっていう話なんですけど、全然なんか筋がばらばらで、いみがわからなくて面白いですね。
この台詞、ことばとしてもひどいし…
ーーツイッター感すらある。(?)
越智さん:ここから徒歩1分くらいのところに移転するという話もあって。そこだと飲食物の提供ができるんですよ。
ここより広くて、一軒家で、キッチンもあって、あとトイレが二つあるという物件なんですが、そこならスペースもあるし、遅くまであけられたりとか。今よりもう少し自由もききますしね。
と、ここで越智さんがなにやらアイテムを持ってきました。
ーーこれはフリーペーパーですか?「viva non-no」…。 ビバノンノ、とは
越智さん:あの、ドリフターズの
ーーババンババンバンバン、ですか?!フロってことでしょうか。
越智さん:フロってことですね。
ーー今3号まで出てるんですね。
越智さん:はい、隔週で。今週もまた1号でてます。
ーー隔週!それはすごいスパンですね。
越智さん:すごいスパンで出てます。今5人で8ページを書いているんですが、全くしばりもなく構成もきめずにやっていて、ネタが尽きるまで続けられるし、できなくなったら誰かが別のことを書きます、みたいな感じで。笑
あとは、9月に「まつもと一箱古本市」をひかえています。
だいたい「一箱くらい」の古本を持ち寄ったフリマのような感じのイベントで、去年の主催者の方がはじめたものを引き継いでいます。マスガタ広場で開催されます。
越智さん:ポーカーですかね…。
もともとボードゲームが趣味なんですよ。よくボードゲームをするメンバーの一部でポーカーが突然流行りだしている、という感じです。
ーーポーカー
越智さん:鯛萬の井戸がお気に入りです。
パソコンはいつも持ち歩いているそう。
手帳やノート、筆箱など、筆記具が目立ちます。
軟膏や眼鏡などの必需品のほかに、たくさんお菓子が出てきました!
書類の整理に欠かせないクリアファイルは、「ジョジョの奇妙な冒険 」。
お財布は猫をかたどったがま口タイプのもの。
不思議の国のアリスのうさぎ柄の巾着からは、本 が出てきました。
越智さん:もうちょっと学生来てもいいのになぁとは思いますね。
ぜんぜん来ないです。浅間温泉だから…
なんで浅間温泉でやってるのかってところなんですけど、何もないからこそ何かはじめたらおもしろいっていうか…
ここ、旅館街なんですけど、浴衣を着て出歩けるところってないんですよね…。
見に行ける場所として浅間温泉で…っていうのがひとつありますね。
ーーこの辺にちょっとお店がふえたりだとか、一つの通りがかわいくなったりしたらかなりいいかもしれないですね。
越智さん:そのきっかけになればなあって。「できるんだな、ここで」って思ってくれる人が増えるきっかけになってくれればいいなと思いますね。
それにここめっちゃ家賃安いし、居抜き物件も多いのですごいおすすめですよ。
次に考えてるとこ、2万なんですよ…
ーー2万
ーーたしかに夜のライトアップも素敵だし、温泉もあるし、浴衣着て夕涼み…なんてのもいいですね。
越智さん:ネットとか見てても、ふつうに一棟貸しですごく安いところも多いんですよね。2万5千円とか。
ーーなんかできるじゃん…
越智さん:この通りにカフェができるっていう噂もあるんですけど…。そしたらもっと面白くなるなあって。
ーー日曜の朝だけモーニング、なんていうのも需要ありそうですね。
ーー越智さんにとって本とは何ですか?
越智さん:支えになっていた時期もあったので…
なんでしょうね。お守りみたいな。
ーー本は何に効くと思いますか?
越智さん:うーん、心に効くと思いますね。
ーーどんな人に一番本を読んでもらいたいですか。
越智さん:他に拠り所のない人とか…。
忘れていたことを思い出せる機会にもなるので。
今きゅうきゅうになっていて、もう「仕事しかないです」みたいな人には、本読んでもらいたいなあって思います。
実用書やビジネス書しか読まない人っていうのがけっこう多い気がします。
それももちろんいいと思うんですが、たまには別なのもいいですよっていうか。
「すぐに使えるよ」って言わないと読まないっていう感じだと、そのほかの本を手に取るきっかけがないですよね。
絶対"戻ってくる"じゃないですか。関係のない本でも、いつか仕事や何かのヒントになるっていうか。
ーーすぐ「使えない」本を読むことの大事さって、目先の即物的な「豊かさ」より先の地点の話ですよね。そういうことに時間を使える余裕が、人生のちょっとした岐路に影響を与えたりするのかも…。
本を読む時間がなくなったということは、生活の慌ただしさや余裕の有無をはかるひとつの指標なのかもしれません。
読書をする余裕がないと思っている人ほど、「無駄」に、「関係のない」本を読んでみる。
そういう時間を敢えて作るという大切さについて、改めて考えるきっかけになりました。
「昔はよく本を読んでいたな」と思い当たる人の多くは、今の生活に余裕を失っているのかも…。
おんせんブックスさんはとても居心地がよく、ついつい長居してしまいましたが、越智さんのおかげで楽しいひとときを過ごすことができました。
ありがとうございました。
今後浅間温泉界隈がどのようになっていくのか、楽しみですね。
それではまた次回!ごきげんよう。
(インタビュー/取材:えづれ 写真:なかざわ)
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