【取材】あらゆることに「なんでやねん」!美術作家・イラストレーターの田中さんに取材してきたよ!

Category : meet the knower 記事

 

Knower(s)から徒歩30秒のところにある、マツモトアートセンター。

そこで開催されている銅版画講座をきっかけに知り合った田中さんは、美術作家。

自分の生活圏内ではミュージシャンよりも希少性が高い、美術を生業にしている人。

自己紹介の際に「画家です」と言って、よくキョトンとされている姿を目にします。

一口に美術といっても千差万別ですが、田中さんがどのような仕事をしているのか、とても気になりますね。

 

インタビューでは割合とんがった発言をしている田中さんですが、普段はのんびりとしたおおらかな感じの人です。

それでは、行ってみましょう!

 

 

 

きょうのKnower

田中まゆこ

1989年生まれ 大阪府出身

美術作家・イラストレーター

思い出や日常の中にある小さな不思議や疑問を作品にしている。

マツモトアートセンターにて銅版画講師も務める。

 

 

 

田中さんの楽しみ方

絵を描きます

ポケモンが好きです

よく笑います

刺青がたくさんありますが、至って小心者です

料理を作るのも振る舞うのも好きです

かわいい車に乗っています

銅版画を教えます

デザイン事務所でアルバイトをはじめました

 

 

 

田中さんの主な出没場所

TSURUYA

丸善

マツモトアートセンター

 

 

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田中さんはピカチュウが大好きらしく、ピカチュウの刺青まで入っているそう。


 

 

 

田中さんのこれまで

ーー田中さんが絵を描きはじめたきっかけはありますか?

田中さん:子供の頃からすごい好きやって。大阪のど田舎にすんでたんやけど、近所の子とかは外で毎日遊ぶみたいな感じ。うちも結構遊んでたけど、朝起きた時とかに「今日はめっちゃ絵描きたいんや!!」っていうときが結構あって、そういう時は近所の友達が来ても「今日、絵描きたいから遊べへんねん」とか言うと「なんやねん!!!」とかいって逆ギレされて(笑)。「俺のなんとかレンジャーソーセージやらんぞ!!」とか言われて、「ええわぁ!!!」とかいってケンカして。

 


臨場感…!


 

田中さん:で、一人でイライラしながら描き始めるけど、でも描くとなんか気が静まって、時を忘れて描いてたようなのがあって。

うちの両親はもともとテキスタイルのデザイナーやってんけど、母曰く子供との遊び方みたいのわからんかって、で、なんか自分でもできることっていったら絵の具遊びとかしかなくって、それをやってたらうちも「楽しいなぁ」と思っていた気がするというか。

 

 

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ひょうきんなポーズをする田中さん


 

田中さん:母は「絵の具がもったいない」とか「紙がもったいない」とかいう話をしないで、もくもくとのびのびやらせてくれたりしたね。父も仕事関係でいろんな資料とかあったんやけど、それも使わんかったら全部くれて、「好きなように切ったり貼ったりしてええで」とかいって。つくったり描いたりすることが自然になってて、なんか思ったもんをやってみることの快感みたいなんを結構早い段階で実感をしてたような気が、今はする。親も、そういうことをやること自体は「いいよいいよ」って言ってくれてたから、自然と幼稚園の時とかの文集とかみても、その頃から将来の夢は「絵描きか漫画家」って書いとって。「これがきっかけで」っていうのはなくて、わりと自然にそのままやってきた感じかな。

 

ーーそうだったんですね。そういえば、わたしの父もそこまで子煩悩タイプではなかったのですが、絵が好きだったのでよく絵を描いてくれたりしたのを思い出しました。やたらリアルなタッチの筆圧高めの猫とかだったんですけど、子供なりに楽しんでいた気がします。へんに子供向けじゃない感じって、逆にいいのかもしれないですよね。

 

 

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以前、田中さんに似顔絵を描いていただきました。

田中さんはmayucox名義でインスタグラムをやっています。作風は違いますが、AQUIRAXを彷彿とさせる名前。


 

 

田中さん:そういうコミュニケーションのしかたの一個やったんちゃうかな。うちも結構さ~、今はガンガンしゃべるし、一人で飲みに行っても知らんおっちゃんとかにバーッ話しかけたりするけど、子供ん時めっちゃ引っ込み思案やって。新学期とかに全然知らん子に「なぁなぁ」とか言えへんかって。

 

ーー過去の自分はどうだったのかは覚えていませんが、気持ちはわかります。

田中さん:恥ずかしくって怖くって…。うちはいつも自由帳あけて何かをバーッて描いてたら、ぴゃーって人が寄ってきて、「上手やなぁ」とか言ってくれて、そっからやっと友達になるきっかけができるみたいな。だから自分にとって、すごい身近なコミュニケーションのツールが絵を描くことやったってのがおっきい。そうせな友達の作り方がよくわからんかって、恥ずかしくって。

今は、「自分のつくったものはこういうのです」「こういうこと言いたいんです」って言って行かないといけない…。それで食べていきたいし、金銭も得たい。

たとえば「アートとか美術とかわからんみたいなやつはええねん」みたいななぞの諦めとか、そんなこと言うてて自分の描いたものが面白いはずないというか、もったいないという気がするから…。描いて、うちはすごい伝えていきたい。

昔は「友達が欲しい」っていう行動のあらわれで絵を描くしかなかったっていうのがあったけど、「もっと友達にこんなこと言いたい」っていう風なそういう感覚で他者にも伝えていきたいっていうか。うちにとっては描くことがすごいやりやすいっていうか、伝わりやすいっていう感覚を得ているからこうして続けてるってのはあるかなぁ。

 

 

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田中さんの自宅の作業スペース。現在はコラージュを基調とした作品などを製作中。


 

 

 

京都から松本に

田中さん:松本に来る前は京都にいたんやけど、今一緒に住んでるよーちゃんっていう彼と付き合うようになって、よーちゃんの就職がこっちになったからついてきちゃったんやけど。うちは昔、遠距離恋愛に失敗してて、すごい寂しかったこととかを思い出すとつらいから、「うちは遠距離は無理な体質なのだ…」と思って。

京都は一人で8年住んでて思い出のあったとこやったから、離れるのにすごい勇気がいって。

 

ーー盆地から盆地ですね。盆地の星…(?)

 


田中さんは、同居している中田さん(通称よーちゃん)との日常を描いた漫画も描いています。


同級生の結婚式

 

 

 

京都のスタジオで制作アシスタント時代

田中さん:うち高2のときに学校やめんねんけど、それまで大阪の実家にいて、学校は中学から京都の学校に通ってたんで、遊ぶのとかも京都やったし、ちょうど父方の祖父母の家が空き家で京都にあったから「出るか」って17で学校やめて速攻一人暮らしを初めて、本屋でバイトしたりいろいろしてたんやけど、同じ地元の出身の現代彫刻家の知り合いがいて、その人が「働かへん?」って言ってくれたんよ。

でもまぁ、最初は「スタジオに遊びにきいや」みたいなことを言われて、「やったぁ」って感じで最初遊びに行って、ちゃちゃ入れたり自分の絵を描いたりしとったんやけど、「これ、やってみいひん?」みたいな感じでその人の作品を作るバイトみたいになっちゃって。

 

 

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こちらの写真は、銅版画の版のようす。


 

田中さん:その人は京都の美大で准教授やってんねんけど、スタジオには他のスタッフもいっぱいいて。だいたいがその関連できた教え子やったりとかやねんけど、毎日10人ぐらいかなぁ。

うちは美大とか行かなかったんやけど、まぁ行きたかったけど体調のこととかあって断念して。で、その作家さんは京都の公立の美大を出ててエリート街道まっしぐらみたいな人やってんけど、その人に何回も「うちって、大学行っといたほうがええんかな」って話をすごいしてたら、「別に行かんでええ」と。

「俺も美大に行って、いろんな学歴とかは得れたけど、ほんまにおもろいことっていうのは学校の中にあるっていうよりは、自分が守られているうちにいかに外にでて発見するかやで」って。「結局自分の足で稼いだりして、いいインプットをすることや」って話をされて。

 

ーーなるほど。

 

 

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田中さん:結構いろいろなことを教えてくれて、「ものづくりについては本人たちのパーソナルな部分が響くから、いろいろ観に行ったらええで」とか「つくったらええで」とかそれぐらいの話やねんけど、とくにアートでやっていくための経済活動とか経営のしかたとか、こういう風に美術作品が売れていくとか…。あまりたくさんは語らなかったけど、そういうこととかをすごい実感させながら、いろんなこと教えてもらいながら勤めてて。給料もわりとよかったし、結構楽しく働いてて。

 

ーー大事なアドバイスですね。田中さんは普段から行動力があるなと思っていましたが、この話を聞いて納得しました。

田中さん:で、その人は作品がバーって売れたりしたら、「こないだのあれ、なんぼで売れた」みたいなのを言って、みんなの士気を高めたりとかするねん。ほんで「この今作ってるやつはどこどこのアートフェアに出すから世界中の、こんな人が来てこういう風に売れるから」「すぐに売れる環境ではあるけど目利きばっかりくるからほんま頑張って」みたいな。チームワークで仕事をするっていう姿勢もすごい良かって。で、一番本人がキレキレで働いてて。

大抵おっきいアートフェアにだしたり個展があった後とかに、その人の友達のシェフの人を呼んだりしてパーティをするねんけど、その時もこう、コアなスタッフから学生のお手伝いまで40人ぐらいになったりするねん。そういう時でも自分から最初に一人ずつに乾杯をしにいくような人やって。

「あ、こういうことがやっぱどの世界でもむちゃくちゃ大事やなぁ」ということが身に沁みてわかって。

 

 

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田中さん:でも、その人にうちのつくったものとかをみせても、「いまひとつ足りん」みたいなことをすごい言われて、アドバイス的なことをしつつも結局はそういう感じになって、すごい悔しかって、うちは。

そこの仕事は体調が悪くなって辞めてしまったんやけど、松本を離れるときに一応挨拶がてら作品を見せに行ったら「ええやん」ってすごい褒めてくれて。幸先がいいというか、長野に出やすい、心残りがあまりない状態で出れて、すごいそれが自信につながったっていうのが結構あって。

ものをつくったりするってのはしんどいし、途切れちゃうことはたまにあるけど、こっちでもそういう活動をしっかりやっていこうっていうのが結構あって、なんかその人にめっちゃ感謝してるって感じ。

あとは一緒に住んでるよーちゃんもすごい協力してくれるのもすごい大きくって。うち、何にでも「ありがたいねぇ」っていうのは好きじゃないんやけど、これに関しては素直に「いやぁ嬉しいねぇ」ということがむちゃくちゃ多いかなというのがあります。

 


師匠&よーちゃん


 

 

37℃

 

 

ーー田中さんはどういう作品が好きですか?

田中さん:自分は「心にカミソリを持って、塩酸の中に手を突っ込んでしまうような人付き合い」みたいなやつが結構好きやねん。個人的にそういう人が愛くるしく見える。それに似てるけど、ドン引きするような固執があるかどうか(笑)。

「ほんまちょっとそれ、リアルに関わりたくないなぁ」という感じが滲み出ている作品が、うちは好み。そういうのが、心をゆさぶる作品には多いかなという気がする。

うちはいろんなものをわりとそつなくやるみたいなタイプやから、「いろいろ描けるね」みたいになるのが結構悩みではあって…。自分にしかできないこととか、「まゆこはこういうもんです」みたいなんを、すごくガチっと手に入れたい欲求がすごくって、「模索中です」っていう言葉に甘んじれない現実をひしひしと感じながら、必死で手を動かしてるっていう最近は。

 

ーーなるほど。

田中さん:あと、結構芸術作品っていうのは美術館とかギャラリーに展示されていることが多いから、なんていうか、美術館に行くスタイルはこういうもの、とか、こういうことを考えながら観ないといけないとか、そういう余計な部分が多くて疲れちゃうみたいな人もいると思うんよね。妙な権威主義な感じっていうか、こんな高尚なものを観に行く自分みたいなところっていうか、そういう………

 

中田さん(田中さんの彼):そんな気持ちも許してあげたら、いいじゃん!!(笑)細かいねぇ~(笑)。

 

田中さん:いい「じゃん」…!(笑)

 

ーー(笑)

 


空気がゆるまる


 

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数年前の田中さん。作品を作っているところ


 

 

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冬の田中さん。銅版画を制作しているところ


 

 

 

松本の気になるところ

田中さん:なんやろね…??うーん、移民文化やなぁってめっちゃ思う。良くも悪くも、みんな「ないものねだり」の気持ちがあるんちゃうか…?と思うことはある。他府県から来た人の、「長野ええわ~」っていう感じって、「ないものねだり」から来てる気がするっていうか。何かをすごく大事にしたり行動したり発信したり…。

 

ーーたしかに、余生を過ごしたいとか、ユートピアを求めるような感覚で来る人は結構いるような気がします。同時にそういう幻想のようなものが、人々の原動力になっていると感じることはありますし、わたし自身も夢を持っているような節があるなと思います。

田中さん:たとえば京都は古いものがいっぱいあったりするから、「古いの、ええわぁ」っていう感覚でくることがよくあるけど、長野は「長野ってなんかあるかもしれん!」って感じ。「自分なりのか弱いユートピアがあるかもしれん」っていうのできて、それがなんか、たくさんの人にべたっとフィットしてる感じというか…。うまく言われへんけど、ナゾなとこがおっきい。

うちは関西人だからかもしれないけど、結構なんにでも「なんやねん!!」って思っちゃうから、そうなったときに「地元の人間はクヤシくないのか?」と思う時はあるなぁ。

 

ーーオッ。

 

 

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田中さん:よそから来た人を「ええやん」って入れちゃうこととか、そういう人たちとつながっていくことがステータスみたいに感じる人がいることとか…。

 


「長野県の人はツッコまないね。超受け入れるやん!?」って、この間べつな関西圏の人もツッコんでました。ツッコミ文化、たしかに感じません。


 

田中さん:だって、外から「ないものねだり」で来た人たちがちょろっと見つけた土地の利点、彼らに取られてんねんで!?悔しないんかぁ~~!?!?みたいな(笑)。

うちは結構ものを作るから、自分でやれへんかったとことか、「その着眼点なかった~~」みたいなのに「クゥ~~!」ってなるねんけど、そういうのないんかぁ~~~!!(笑)

 

ーーツッコミだ…!

 

 

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素早く動く田中さん


 

ーー京都は結構「よそ者を簡単に入れない」という気風がが強いというイメージを勝手に持っているので、そういうところで長く暮らした人にとっては「プライドはないのか」と思われてしまうのもしかたないかもしれないですね…。とはいえ私も移住者なので外の人なんですが、長野県には「みんなの白いキャンバス」がたくさんあると感じることは多いです。そういう可能性に、期待している人は多いのかも。地元の人はどう思っているのか、わたしも知りたいです。嫌だなとか思われているのか…?!

 

 

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そして、心に「なんでやねん」を掲げることの大事さについて考えていきたいです…。


 

 

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田中さん:松本ってトゲがあんまりないというか…。前住んでた京都は格差がすごいあんねん。被差別地域とかもすごいあるしな。

中田さん(田中さんの彼):ぼく、京都でそういう地域に住んでたことあるけどな、別になんにもなかったで…?…でも、そこにいる人の店とか行くと、普通に美味しいけどな…!

 


ふたたび空気がゆるまる


 

田中さん:まあだから、けっこう関西ってそういうのとかも結構露骨にあんねん。しかも、そういうこととか、いろんな本音とか嫌みみたいなもんをぶつけてくるっていうか…。まぁ「ほっといてくれ!」っていう感じのも結構あるんやけど、でもこっちにいると、無言の圧力みたいな感じが強いっていうか。なにか思ってても、みんなあんまりなにも言わへんやろ。「しょうみ」「じつは」っていう話をあまり感じられないから、狙いもわからないし。作品とかも、何を狙ってつくったらいいのかとかもわからんみたいな。すっごく混乱することはあるかな…。

 

あと、「~な生き方」みたいなものに幻想を抱いてこっちにくる人も多い気がする分、結構芸術をやる人にも幻想みたいなんを抱いてる人も多い気がすんねん…。ものをつくっている人だって、スーパーで売っている醤油や歯磨き粉やら使うわけじゃんか(笑)。

 

ーー芸術をやっている人は、もっと大層なもんだと思われてしまうと言うことなんでしょうか。

田中さん:ものを作っている人が好きっていう人は多いんやけど、そこに対する幻想を持っている人もすごく多い気がして、人付き合いとものづくりとの狭間に軋轢が生まれることがある気がするというか…。

 

ーーちょっと違うかもしれないですが、過去の音楽の先生が、外で「教師です」っていうと「…あっ」って空気になるので「美容師です」とか別の職種を名乗ってみたりするっていう話を思い出しました。

 

 

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田中さん:あと、みんながみんなではないんやけど、「アートを買いたいって言う風にはあんまりならないけど、アートに囲まれた空間でお茶は飲みたい」みたいな感じ…。

だから作品を作って値段設定をするときに、ディスカウントのことに頭がいってしまうねん…。買い手がなかなかいないから。「安い割にはよい、というものは欲しい」けど、「これは金出しても欲しいぜ」って言う風にはならないっていうか。…なんやろ、フリマとか雑貨文化の感覚みたいな感じっていうか。

作ってる側の力不足もあると思うねんけど、スーパーの値引きシールを見て買うような感覚が結構根付いている気がする、っていうか…。

 

 

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ーーたしかに、あるものでどう効率的に生きていくかみたいなことを重視する百姓的な人がわりと多い土地だという気がするので、残念ながらアートのようなある種「エクストラ」なものを生活の中で求める人はあまり多くないと思いますし、そういう文化も育ちにくいのかもしれません。それに、松本に限ってというよりは、大都市以外には結構当てはまってしまう話というか…。芸術が身近にない大部分の層の人にとっては、「芸術をどう扱えばいいのか」という感覚自体がないと思うんですよ。

田中さん:それはあるね。まぁ、買いたい人もおんねんけど、安価な値段で買いたいというジレンマを抱えている人が多いと思うね~。

 

ーーなるほど。地方で芸術の需要を増やすにはどうしたらいいんだろう…。

田中さん:あと、ものすごく受け身な感じがするのが気になるときはある…。やっぱ、うちが関西人だからなのか…?!

もちろんいろんな行動を起こしたり、考えて言ってる人もたくさんいて、その人たちは色々なことを思っているっていうのはわかるねん。でも単に群がってしまう人たちには意外と何も無いんじゃないかみたいな…。まぁ単にうちは、人間くさくて心にカミソリを持ってるような人が好きやから、そういう観点でみちゃうだけに、「ンッ」って考えちゃうとこがあるっていうか……

中田さん(田中さんの彼):…まゆちゃん…??…なんかえらいディスってへん…??

田中さん:でも愛あるで~~!愛!!何年か住んでみて松本のおもしろさとか分かってきてん。友だちも増えたで。

 

 

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ニコニコする田中さん


 

田中さん:そんで、結構感じる松本のいいところは、つながりを大事にするとこかな。困ったことがあってもすぐ、どうにかしてくれそうな友だちを紹介してくれたり…。いろんなきっかけを「みつけやすい」っていうのはあると思う。

フリーランスでイラストもやってるけど、都会はわりと人対会社っていうか。松本はお店やイベント開く行動力のある個人が多いから、人対人っぽい関係性が多い。相手もこちらも、より個人を大切にできる仕事ができるかんじがあるなぁ。

 

 

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田中さんの一週間

 

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細かい!細かいので書き起こしは割愛します(笑)。

平日は朝から作業、休日はお休みというのが基本的な流れ。最近はデザイン会社のアルバイトも決まったそうです。

田中さんは朝もきちんと起きるし、時間も守ってくれる印象があります。わたしも早起きがしたいです。

タイトルの左に潜んでいる動物が妙にかわいらしいです。


 

 

 

田中さんのかばんの中身

 

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愛煙家の田中さん。最近は巻きタバコ派だそうです。

いつでも絵が描けるクロッキー帳と筆記用具もあります。

結構リップクリームが数種類あるという方が多いのですが、不思議に思ったので自分のかばんをチェックしたら口紅類が4種類くらい出てきました…。世の女性にはありがちなことなんでしょうか。

YABAIと書かれたかばんは田中さんがシルクスクリーンで製作したもの。販売もしているそうです。


 

 

 

最近はまっていること

田中さん:最近っていうか、夜の9時からNHKでやってる「きょうの料理」をできるだけ欠かさず観ること。

ご飯をつくることがめっちゃ好きやから、だいたい週に1回くらいは人を家に呼んだりして食べてます。いろんな人に遊びに来てほしいね。

 


わたしも時々お邪魔しています。


 

田中さん:趣味は大正琴。最近始めた。山崎バニラっていう活弁士の人が昔からよくテレビに出てたの見てたんだけど、大正琴を弾きながら出てたことがあって、「なんてかわいい楽器なんや」と思って。で、なんかずっとほしかったんやけど割と高くって。いや、ピンキリやけど。アマゾンとかで安くて5000円とかでうってたんよ。

 

ーーそれは楽器にしたらかなり安いかと…!

田中さん:趣味でやりたかったから、もっと安くてよかったんよ(笑)。チャチくてよかったから、「そっか、ヤフオクがある!」と思ってヤフオクで調べたら、100円であったから…。でもチューナーのほうが1000円という高さで(笑)。

 


ミニマルなお金の使い方…


 

田中さん:大正琴ってエレキの大正琴もあるらしくて、エフェクターとかつないだらへんな音になるんだけど、エレキ化したいなあと思ったらこないだアマゾンで3000円で大正琴用のピックアップ売ってて、ちょっと今度買ってエレキ化しようと。エレキ大正琴って安くて9000円くらいから売ってんねんけど、かなり安くエレキ化することになった。

 

ーーたしかに、バイオリンやウクレレにもペタッて貼ってエレキにできるやつありますよね。ああいうやつでしょうか?

田中さん:そういうやつ。そういえば、うちの父親もへんな趣味がいっぱいあんねんけど、今電子ピアノにハマってるらしいねん…。その前は帽子づくりやったわ…。あ、そういえば父は昔「探偵ナイトスクープ」で探されたことあるんよ(笑)。ちょっと自慢やね…!おっさん2人くらいしかでて来おへんけどな…。

 


著作権の関係で掲載はできませんが、かなりシュールな回になっていました。


 

 

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こちらの作品の背景の金色の部分は、全部丸いシールを貼ったのだそうです。

そういえば、以前田中さんの彼の中田さんがJAVAか何かでプログラムを組んでいて、

「まゆちゃんのアートで、シールをたくさん貼ることでランダムな柄を表現するみたいなんがあるねんけど…こんなのアナログやなくてデジタルでやったらええんちゃうかと思ってしまう。まゆちゃんのアートに対抗して、ランダムな柄がでるプログラム組んでみたんやけど、なかなかうまくいかへんねぇ…。」

というようなことを言っていたので、なんだか面白かったです。


 

ーー目標はありますか?

田中さん:東京で個展とかしたいなぁ。去年、松本のParades Galleryで個展をやったときに、うちがずっと憧れてる東京のギャラリーのオーナーにへんな板で手紙つくって送ってん。そういうとこっていっぱい手紙来るから、ペラいやつやったら絶対ピャッて捨てられると思ったから、バキッと折れない硬いやつで、かつデカいものが来たら絶対読むと思って、でっかい板にめっちゃラブレター書いて送ったってん。そしたら来てくれはって。

 

ーーその手口、懸賞に応募しまくるプロの人みたいな感じですね(笑)。

田中さん:で、その人は70代くらいの人やって、「はっきり言って、自分のやり方は古いと思う。」っていうふうにおっしゃっててな。「自分でギャラリーでやらなきゃあかんとか契約しなあかんということ自体を疑っていって、いいやり方を見つけなさい。でもそれをすることに関して頑張るな」というような話をされてて、それがわりと最近また寝る前とかにぐるぐる回ってくるねんけど…。

簡単な言葉のチョイスで言ってくれはったけど、果たしてその「頑張らない」ことって…。具体的になんもhow toないし、禅問答みたいになってきて、悶々としてしまう。

 

 

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ーーたしかにそう言われてみると、「頑張るな」というのは難しいです。手を抜くこととは違うし、不要な部分をいかに排除するかというか…。頑張ることの方が、何をやらないといけないかがみえやすいですよね。

田中さん:自分がほんまにええと思うことを、ただやれみたいな。「こなす」とはまた違うんやけど、「ただやる…」。

 

ーーなるほど…。よく見せようとかそういう気持ちを抜きにして、「ただやる」という姿勢の大変さと大事さを思います…。

田中さん:でもそういう話を聞いて、さらに「この人の元で個展をやりたい」とか思っちゃったけどね(笑)!かっこええなぁとか思って(笑)。

 

 


これはまた違う話ですが、以前「力の抜き方を知らない」と言われたことがあります。普段どこに力を入れているかもわからない、あるいは力を入れているのかすらわからない状態だと、リラックスすることもできない。そういう時には、力を思い切り入れてから抜くといい、と言われたなぁとふと思い出しました。


 

 

 

ケガをしながら学ぶ

田中さん:思うねんけど、今って情報に触れる機会って今めっちゃ多いけど、カジュアルに言えばそれに踊らされてる人も多いっていうか。もっとケガしてやっていったらええやん…!そういう経験が工夫を生んだりとか、知恵を生むことなんちゃうかな…。

 

ーーググらない。(笑)

 

田中さん:うちも結構新しいことやる時はこわいし、ディスったりとか、「できへんて…」とか「高い!」とか言っちゃうし、ほんま放置してまうねんけど、一度やったら「なんか、早よやったらよかった!」てなるねん。そうなるとその楽しさにのめり込んでしまって、だいたい展示とかを1回やってしまったりするという…ことがある(笑)。

 

ーー展示を

 

田中さん:もっとケガして、もっと汚れて、もっと自分でつけたふせんみたいなのをとってやっていかないと、「果たしてきみは何を軸にしてるのか」を明確にしていけないというか…。「じゃあなんでこれがええのん?」「これが嫌なん?」とかそういう話になったときに、そこに自分がいないっていう人がすごい多いと思う。「誰々さんがこうだった」とか、「わたしの友達がこれだった」とか。

自分たちが生きてるちっちゃい日常の中で、去勢されたみたいな感じでビニールハウスみたいなとこに保護されてる中で、外から入ってくる日の光みたいな情報しかないのに、それだけで何でそんなおっきい顔して、なんでも知っていて偉いみたいに筆圧高めにものが語れんのか、でかい声で言えるのか……みたいなことが、年々情報社会がすごいおっきくなっていくにつれてすごい疑問に思うこと。

 

 

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田中さん:結局自分で手を汚してないとか、特になんもしてないから、権威とかそういうもんに頼るしかないんやないかな…。自分で意見を持ちたいと思うんやけど、思うばっかりで何もできひんからそういうわけのわからん人種が非常に出てきてる気がすんねん。だからむしろ、そういう人たちから「それ私も」って言ってもらえるようなものを、うちは掘り出したい。「そういう感覚、わたしもそうやったわ」「これわかるわ」「うちもそれ嫌やと思ってんねん!!」とか、そういうのがやりたいなぁって。外面にあんまりとらわれない、「わかるそれ、クゥー」みたいな、ペグを刺されるみたいなことっていうか…。

人と共感したりとか、人と違う意見いうとか、そういう意味でも「つながり」をすごい求めてるから、自分はつくることをしてるのかな…。

 

 

 

田中さんの野望

 

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田中さん:人気者になって…(笑)

 


「人気者」って、久しぶりに聞いた気がする…。いい言葉だな…。


 

田中さん:なんか転々としながら生活がしたいな。よーちゃんといれたら最高やけど。

むちゃくちゃ大金持ちとかは別にいいけど、芸術活動でちゃんと食べれて、国境も問わずにいろんなとこにいれたらいい。なんかキャンピングカーでいろんなとこへ行くとかもええね。いろんなとこに行って、その都度自分なりのやり方で、自分にしかない表現でアウトプットできるみたいなことをしたい。

うちの普段生きてる日常って、むっちゃ遠くに住んでる人の日常とも絶対リンクするってうちは信じてて。だから、そういうしゃべったこともない、顔もみたことないような人が、「あぁ、なんかわかるわ~!」みたいなんを、すごい、やりたい(笑)!なんか、なぞにロマンを感じてしまうわけ。

 

ーーその感覚わたしも信じているようなところがあります。わたしは別に何もつくっていませんが、たまに脳内で語りかけたりしていますよ。「おーい、誰か」みたいな。

田中さん:脳内で!?あ、あとは作品で、「人力SNS」みたいなんをしてみたいな。

 


どんなSNSなんだろう


 

田中さん:お仕事の依頼もおまちしています!(笑)銅版画講座もよろしくです!初心者でも楽しめるし、楽しいで〜!ラインスタンプも作ってます。

 

 

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こちらは銅版画の応用編の作品。

田中さんはKnower(s)から徒歩30秒のマツモトアートセンターにて、銅版画講座を開講しています。くわしくは、マツモトアートセンターのホームページをご覧ください。


 

 

 

取材を終えて

 

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ものを作る過程にふれると、たくさんのことを考えて作られているということに気がつきます。

出来上がった作品よりも、どういう思いで、どんな過程を踏んで制作に臨んだのかというところのほうがずっと価値があると感じることも多いほどです。

 

たくさんの意見や疑問から表現がうまれて、それがたまたま絵や文章であったり、システムや商品などに結びつくのだと思いますが、芸術作品においては押し付けられる目的や制限などが無い分、商品やシステムをつくることよりもむしろ多くのことを考える作業を強いられるのかもしれません。

 

合理性や利用価値を追求する必要はありませんが、ルールのないものづくりのなかで独自の創造性を保っていくということもまた、険しい道のりであると思います。

 

日常にひそむ「なぜ」に徹底的に向き合うこと。芸術活動にとどまらず、自分たちの基本的な暮らしに食って掛かるような姿勢は、あらゆる側面でたくさんの「気づき」を生むはずです。

 

芸術にはいろいろな用途や楽しみ方があると思いますが、作家さんの人柄や思いを知ることで、作品が違った見え方になるのもまた面白いもの。

田中さんは、今日も力強く「なんでやねん」を投げかけながら、身の回りの疑問に向き合っているのかもしれませんね。

 

それではまた次回、ごきげんよう!

 

(取材・写真:えづれ 写真提供:田中さん 撮影協力:ニチカhair)

  
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